私は自分がひどく若い頃に「飛んでから考えた」というタイプだ。22歳で学生出産し、結果、20代はずっと大葛藤しっぱなしの無謀なじゃじゃ馬だった。今もよく口にするのは、「私は新卒でお母さんになったので」。”お母さん”起点でキャリア(?)が始まったため、何をするにも兼業主婦であることが大前提。子どものお迎えまでの数時間で何をするか、どこまでできるかが私にとっての職業人生だった。そう、“カッコよくて華やかな独身キャリアウーマン”なんて時は、一瞬たりともなかった人生である!

そういうまったく好条件の揃っていないところで、それでもアレもコレも諦めきれずに泣きわめきながらじたばたしてきて、出産から20年経った今思うのは「人生っていつか帳尻が合うんだなぁ」ということ。周囲の人たちを見ていると、それぞれの人材にサイズというかキャパシティがあり、さすがに40も越えると己のサイズが分かってくる。そのキャパシティが満たされているか否かで、それぞれ「幸福感=帳尻が合った感」が違うようだ。

私に関して言うと、自分の器がもっと大きいと思っていた頃は「こんなの私じゃない!」「もっとできるはずなのに!」と、それはもう醜く暴れていた。しかし、自分のサイズ感がようやく分かってきて「やだアタシ、思ってたよりはるかに小っちゃいわ~(笑)。持ってるもので頑張るしかないわ~」と受容したら、何だか憑き物が落ちたみたいにラクになった。

誰だって、そのときに持っている力以上のものを欲したら無理が生じる。そこを、努力や才覚で克服するんだとゴリゴリやってできるのなら、もともとキャパシティが大きい人なのだから、そのまま進めばいい。だけど「自分はそうじゃないなぁ」という実感があるのなら、時期をずらすのも一考だ。マルチタスク思考で、一度にあれもこれも全部実現するのばかりが「優秀」「良い人生」、まして「正解」なわけじゃない。全然ない。

最近はみんなよく分かってきて、「ワークライフバランスというのは、個々に解がある『それぞれのバランス』の話であって、全てを同時に均等に持つ必要はない」と言われ始めた。「女性はマルチタスク脳なんだから、あれもこれも上手に賢く切り盛りする方法論を考えましょう!」なんて話には「古いわ。ケッ」という拒否反応が出始め、女性があれもこれも選べる時代になったからこそ、むしろシングルタスクの姿勢でそれぞれに真正面から取り組んで納得のいく作業をしたいと考える若い女性も、声を上げ始めた。