双方が同意できる「落としどころ」を考え出せるか

難しい話し合いをうまく始めるためには、双方が同意できる要素を考えることが大切だ。

それが共通の目標かもしれないし業務規定かもしれない。「私たちはどちらも会社を次のレベルに押し上げる計画をつくりたいと思っているよね」とか、「この決定は完遂するということで意見が一致しているよね」といった語りかけをしよう。

共通の基盤は相手が本当に関心を持っているものでなくてはならず、関心を持っているはずだと思い込んでいるものではいけない。次に進む前に、相手がこちらの言葉に同意していることを確認しよう。

まず、私はあなたとの関係を大切に思っていると相手に伝えるのもよい考えだ。そうすれば相手は、こちらの主張の意図が個人的なものではないことを理解して安心するだろう。

相手の考えはすでに理解していると思っている場合でも、相手の言うことをしっかり聞こう。相手の主張を完全に理解し、自分がその主張に賛成できない理由を解明するための質問をしよう。賛成できないのは関心の違いによるものなのか、それとも認識の違いによるものなのかを見きわめよう。

ワイスによれば、そのためには「次に何を言おうかと考えるのをやめて」能動的に聞く必要がある。相手の言葉を単に耳に入れるのではなく、本当に理解し、吸収しよう。

相手の説明を聞くことで、解決につながる重要な情報が得られるかもしれないのだから、相手の主張に素直に耳を傾けよう。たとえば、相手が「自分は上司を満足させようとしているだけだ」と言ったとしたとしよう。それに対し、こちらはお互いの意見の相違を解決することが上司の関心とどのように一致するかを、相手が上司に説明する手助けをすることができる。

相手の話を最後まで聴いたら、今度は自分の話をしよう。これは相手の主張に一つひとつ反論するという形ではなく、こちらの考えがどこから来ているのかを相手に理解させることに的を絞るべきだ。

相手がこちらの解釈に異を唱える場合には、それをさえぎるのではなく、不満をしっかり吐き出させよう。

あらゆる方法で埒が明かないときは

すべてのデータがそろったら、解決策を提案しよう。当初考えていた案をそのまま提示するのではなく、相手との話し合いの中で得た情報を使ってよりよい解決策を提案しよう。「あなたはAと言い、私はBと言った。だとするとCという解決策が考えられるのではないか」という具合に、だ。

「好戦的な姿勢をとるべきではない」と、ホワイトは戒めている。相手がこちらの提案した案に納得しない場合には、双方を納得させられる解決策を一緒に考え出そう。

十分考え抜いていっても、話し合いが不愉快な結果に終わることもある。

「こうした話し合いは、個人的な感情が絡んでくるとたいてい不毛な言い争いになるものだ」と、ホワイトは言う。言葉の応酬が激しくなったら、議論を共通の関心なり目標なりに戻して、未来に目を向けよう。「すでに発生した問題をめぐる争いは解決できないが、前に進む道筋を決めることはできる」とホワイトは言う。相手が敵対的だったり攻撃的だったりする場合には、休憩をとると効果的かもしれない。実際に部屋から出てもよいし、「頭の中」で立ち止まり、話し合いの方向性について考えてみてもよい。

このように当事者でなく「アウトサイダー」の目で眺めてみることは、現在、起きていることの全体を把握する助けになることがあるのだ。

議論の進め方を変える努力をすることも効果的なことがある。ホワイトボードを使う、紙を取り出してブレーンストーミングを持ちかける、1杯やりながら、もしくは食事をしながら議論を続けようと提案するなどだ。こういった努力で、2人の間に生まれている力学を変える方向に進めることがある。

あらゆる方法を尽くしても失敗に終わることもある。そんなときは議論を打ち切って、調停役を務めてくれる第三者を見つけよう。

(翻訳=ディプロマット)