2.相手を受け入れて、会話の土台をつくる

心地よく話せる雰囲気をつくることも大切です。本題に入る前のちょっとしたトークは、「この人なら話してもいいな」と思ってもらう、いわば会話の土台となるもの。このとき「良い印象を与えよう」「私のことを覚えてもらいたい」と、自分を前面に出そうとすると、相手は引いてしまいます。トップセールスはここで、相手と自分をうまく調和させる「クラッチ」のような作業をしています。雑談であっても「この人はなにを考えているのだろう」と、相手を知ることを前提としているのです。

相手に会う前の下準備にも余念がありません。たとえば、会社のホームページや担当者のフェイスブックをチェックしたり、顧客の商品が売られている市場を観察したりするのはもちろん、現地に行っても、事業所の壁に張られている標語、内線表などからも情報を読み取っています。こうして観察をすれば、必ず「なぜだろう?」と思う項目が出てくるからです。

「入り口に段ボールが積まれているのはなぜだろう?」「平日の昼間なのに社用車が多いけれど、理由は?」など。これらの疑問なら、相手も自社のことだから答えやすいでしょう。会話がはずみ、どんな相手とでもすんなりコミュニケーションの入り口に立てるのです。

3.箇条書きで資料を準備し、論理的にしゃべる

ビジネスシーンでは、論理的に伝える力がものをいいます。こまやかな気配りでよい関係を築くのは得意なのに、説明するとなると的確に伝えることができず、結果的にうまくいかない。こんな悩みを抱える女性も少なくないでしょう。トップセールスは必ず論理的な話し方を身に付けています。

まずは内容を「箇条書き」で整理することから始めます。方法は人それぞれですが、ポイントを書き出したり、図にしてみたり、伝えるべき優先順位をはっきりさせるための準備は欠かしません。そうすることで、「この提案をお持ちした理由は3つあります」といった具合に、最初に要点を提示し、後から情報を付け足していくことができるからです。相手も一つひとつの項目について感想や意見を言いやすい。一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションになるという利点もあります。

さらに一歩進めて、どう伝えるかも考えています。「あの顧客はこういう性格だから、こんな言葉でこの順番でお伝えしよう」といったふうに、相手を起点に伝え方を工夫することで、同じ内容でも心に残る強さが変わります。

トップセールスの「伝える力」は、どんな仕事にでも応用できます。ぜひ参考にしてみてください。

横田雅俊
外資系ISO審査機関の営業職として、最年少、最短、最高記録を更新し、世界2300人のトップセールスとして、東京本社マネージャーに就任。独立後、カーナープロダクトを設立し、代表取締役に。数多くの企業の営業力強化に携わる。実践重視の営業力分析、営業戦略構築、営業トレーニングに定評がある。著書に『トップセールスには、なぜ「いいお客さま」が集まってくるのか?』(ダイヤモンド社)。

文=浦上藍子