今後求められるのは個人に向き合った対応

──日本のアデコでは、ダイバーシティについてどのような方針を持っていますか?

アデコグループは、グローバルで見ると間違いなくダイバーシティ(多様性)においては先進的です。日本においても2名の女性取締役がおり、政府が目標として掲げている30%を目指しているところです。多様性には男女だけでなく、高齢者や外国人、障害者、LGBTなども含まれるので、女性の活躍は一例ですが、日本のアデコも当然そういう方向に進むべきだと考えています。

これまでの会社は、会社対「社員という1つのかたまり」で動いていました。多様性を追求すると、1つのかたまりではなく、社員それぞれへの違った対応が求められます。10人社員がいれば、10通りのやり方をする必要がある。生産性を下げることなく、これを実現しなくてはらなりません。確かに手間はかかりますが、人は個別に向き合うと、ものすごい力を発揮します。得られる結果はとても大きいのではないかと思います。

例えば、「女性は、管理職になりたがらない」という説もありますが、実際はどうなのか、先日女性営業職4人にインタビューしてみました。すると、入社1年目の1人は、将来マネージャーになりたいと回答しました。一方で、入社4年目の人は、「自分は(管理職には)向いていない」と言うのです。しかし、なぜそう思うのかと突き詰めると、「管理職になるための知識がないから」だと言うのです。では、「仮に必要な知識や考え方が身に付いたとしたらどうか?」とさらに聞いてみると、「やりたい」と答えたのです。ただ管理職がどんなものかよくわからず、難しそうだからきっと私にはできないのではないかと思いこんでいただけだったのです。

残りの2人は、「自分が管理職になるイメージがわかない」と答えました。これは、ロールモデルが少ないことが原因でした。ロールモデルが身近にいると変わってきそうです。

たった4人の話を聞いただけでも、これだけ違う。各々に合った、的確なアドバイスやプログラムがないと、活躍してはもらえないことが分かります。高齢者や外国人、LGBTでも同じです。画一的対応ではなく、個人に向き合った対応が求められると感じています。

現在、日本のアデコでは、「キャリアマップ」というアセスメントの仕組みを作り、どんな価値を提供できるのかを評価し、本人にフィードバックをしています。今後どんな役割を果たしたいか、どんなポジションに就きたいかなど、希望や目標に応じて、教育や新たな仕事の紹介をしていきます。単に仕事を紹介するたけでなく、一人ひとりのキャリア開発に向き合う会社になりたいと考えています。

構成=大井明子 撮影=石井雄司