世界的に見ても、男性の仕事

そうした特別なスーツに何が求められるかは様々ですが、オーダーメードでの仕立てを望まれるお客様は、たくさんの人たちから評価をされる立場の方が多いです。例えば、会社の経営者の方々。社交の場や人前に出ることの多い仕事ですから、お客様によってはスーツを「戦闘服」と呼んでとことんこだわります。彼らにとってスーツは単に着心地の良し悪しだけではなく、周囲からどう見られるかという勝負の世界。それだけに店頭で接客をするときはいつも緊張しますね。

それに紳士服の仕立てというのは、世界中どこに行っても男性の仕事だとされているんです。お客様の前に立って採寸をするときの距離が近いですし、それを女性が担当することに最初は戸惑う方も多いと思います。

そこは自分が今後、乗り越えていかなければならない壁だと思っていて、どんなときでも自信満々の表情をするように心がけています。「この子で大丈夫かな」とお客様が不安を感じないようにといつも必死。たとえ心が不安で自信が持てなくても、絶対に自信のあるふりだけはする。店頭では不安を決して見せてはいけない、と気を張っています。

構成=稲泉 連 撮影=村山嘉昭