トラブルの時こそ「優雅に振る舞う」を肝に銘じる

立ち居振る舞いは、トラブルの時こそ更に優雅にすることを意識しましょう。私が駆け出しのコンサルタントだった時、重要なプレゼンテーションでプロジェクターが故障してしまうという事態になりました。私は焦って小走りで代替機を準備しようとしたところ、マネージャーに「走るな! お客様が不安になる」と制されました。その一言で、冷や汗をかいていても立ち居振る舞いは優雅にしなくてはいけないことを理解させられました。

トラブルの時にどう振る舞うのか、相手は通常の時以上に見ています。トラブル時の対応は、うまく振る舞えば、経験の多さや修羅場(と言うと怖がられるかもしれませんが)をくぐり抜けてきた強さなどをアピールできます。テレビドラマでは女性主人公が焦ってバタバタとしているシーンをよく見かけますが、本当に仕事を任せたいと思えるでしょうか? トラブル時には迅速な対応をしなくては、と焦る気持ちはもちろん必要ですが、殊更に優雅な立ち居振る舞いを心掛けましょう。

プロらしさを感じさせる道具の扱いとは?

姿勢や動きとともに、プロらしさを象徴するのが、道具の扱いです。パソコンや使用するアプリケーションの動作など、できるだけ慣れて素早くできるようにしておきましょう。前職のコンサルティング会社の業務分析・改善提案を専門とするコンサルタントチームは、エクセルの分析シートを説明する際にマウスやポインター操作を行わず、全てショートカットキーだけで、画面が自動的に次々と展開しているかのようなデモンストレーションを見せ、クライアントを驚かせることを得意としていました。

他にもホワイトボードに文字を書く時に、聞き手に見えるように体の位置をずらして書くのも道具の使い方の一つです。このようにプロらしさは道具の扱いに表れますが、練習しておかないといざという時にできません。聞き手が見ていてほれぼれする鮮やかな動作や技術の魅せ方を練習しておきましょう。

鉄則―「存在感とギャップ」

最後に、プレゼンス全体の鉄則である「存在感とギャップ」を思い出してください。身体性では、まず存在感を感じさせるために「オーラを感じさせる優雅な立ち居振る舞い」を、特に入場などの出だしやトラブルの時など、印象的になるよう心掛けてください。そして、ここぞという場面で鮮やかな技を見せることで、相手の想像を超えて強い印象を与えるのです。「ゆったり」と「鮮やか」な動きで、プレゼンスを演出していきましょう。

清水久三子

お茶の水女子大学卒。大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、数々の変革プロジェクトをリード。
2005年より、コンサルティングサービス&SI事業部門の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEの人材育成を担い、独立。2015年6月にワーク・ライフバランスの実現支援を使命とした会社、オーガナイズ・コンサルティング
を設立。延べ3000人のコンサルタント、マーケッターの指導育成経験を持つ「プロを育てるプロ」として知られている。
主な著書に「プロの学び力」「プロの課題設定力」「プロの資料作成力」(東洋経済新報社)、「外資系コンサルタントのインパクト図解術」(中経出版)、「一瞬で伝え、感情を揺さぶる プレゼンテーション」、「外資系コンサルが入社1年目に学ぶ資料作成の教科書」(KADOKAWA)がある。