戸惑って立ち止まってしまう「キャリアの曲がり角」

こう書くと「そんなことない。もっと前にそうなることに気がついていたはず」という声が聞こえてきそうです。その指摘は正しいけれど、多くの人は問題を先送りしたがるのが世の常。

さらに問題を深くしてしまうのは、30歳を過ぎたあたりから「自分の能力にある種の見切りをつけなければならない」と思い込んでしまう女性が多いことです。見本にしていた先輩たちの今を見て、自分の現在の能力と比べてみると「このくらいまではいける」逆に「この程度しかいけない」と、勝手に悟ってしまいがち。そのタイミングと先行集団がバラける時期が重なると、どうにも戸惑ってしまうようです。

ただ、このタイミングだからこそ、戸惑って立ち尽くしているのではなく、改めて自分のキャリアを見直してみる絶好の機会だと考えてみてください。日々そういうことを考えているという人は別にして、多くの人は自分のキャリア、働くことと暮らすことなどを、真剣に考えたのは、就職活動のタイミング以来なはずです。そう、その頃の自分と今の自分は、少なくとも、まるで違っているはず。もうすっかり別人になったのだと自覚をして、改めて、これからどうするのかを検討してみてください。方法は簡単です。働き出したころの気持ちを“引っ張りだしてきてみる”ことからスタートです。

「前を行く人を追いかける」という働き方から脱却してみる

もちろん、新しいロールモデル、つまり次の見本となる人を探し出すという方法もあるのですが、お勧めはしません。いつまでも他人に依存しているようだと、その人が大きく道を変更したときに、またしても戸惑ってしまうこと請け合いです。

それならば、次の道は自分を信じて、自分なりに進むプランを立てるほうがいい。その基準となるのが、過去の自分です。働き始めたときに思い描いていた自分と今の自分。比べてみてどうでしょうか? 違っていることが悪いことではないのです。当時考えていた未来と、今がまったく違っていたとしても、今の自分に満足しているならば、問題はない。逆に不満でも、何も問題はありません。

このコラムを読んでいるあなたが、35歳だとして。22歳で大学を卒業し、就職してから12年ほどです。65歳まで働くとして(数字でみると長いですね)、あと30年あります。30年ということは、あなたが経験してきたキャリアよりも長い年数が、まだ残っているということです。少なくとも、働き方を見直し、新しいチャレンジをするのに遅すぎると断言する年齢ではない。

もしあなたが今、目標やロールモデルを見失ってしまったり、戸惑っている状況なのだとしたら、それはチャンス到来と捉えるのがベストなはずです。とはいえ、「働く」だけが人生ではないので、それはそれで難しいところなのですが……。それについてはまた、機会をみて書くことにします。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。