その日は東京に向かう上り線は湯沢ICまでしか進めず、IC手前の塩沢石打SA内にも雪が積もってクルマが止められないひどい状態。たくさんのお客様がごった返すなか、丸3日通行止めは解除にならず、会社に泊まり込みでの対応でした。

そうした際に実感するのは、道路というのはお客様にとって「通れて当たり前のもの」だということですね。中には怒っている方もいるし、通行止めを早く解除しろとずいぶんと怒鳴られます。でも、私たちは謝ることしかできないのです。

一方でそんなときは、目に見えないところで懸命の除雪作業をしています。また、設備故障や道路補修が必要な場合は、現場を監督する上司がしっかりと見守る中、迅速な復旧作業をします。こうした人たちが道路の安全を守っているんだと、新入社員の私は胸を打たれる気持ちになりました。

この入社1年目の体験から、私は道路というものが本当に公共的な存在なのだということを学んだと思っています。通行止めは仕方のないことですが、道路の維持管理の仕事はお客様の気持ちになって、一刻も早く復旧をしようという使命感がなければ、とても務まらないものだということを知ったからです。

高麗 藍(こうま・あい)
2013年、京都大学大学院理学研究科を卒業後、東日本高速道路入社。同年6月に湯沢管理事務所に配属され、現在に至る。

構成=稲泉 連 撮影=村山嘉昭