人間関係を円滑にする「自分の表現法」を学ぶシリーズ。心理学者アルフレッド・アドラーが説いた【自信】【勇気】【リラックス】の3テーマを軸にお届けしています。指南役は自己表現研究の第一人者、パフォーマンス心理学博士の佐藤綾子さんです。レッスンはテーマごとに1レッスン、3つのレッスンが1クール。設問に沿ってセルフチェックした後、あなたの心理傾向を診断し、その対策をコーチしていきます。

■勇気のレッスン

人間の営みは昔から、夏の情熱的行動力に対して、秋は心の深みを探る状態になる傾向があったのでしょう。例えば、松尾芭蕉の有名な一句「秋深き隣は何をする人ぞ」。秋の夕暮れ時に帰り道をたどると隣の家に明かりがついている。いつも無関心なのに「お隣さん、何をしている人かしら?」などと思いをはせる。

他者への関心は心理学では「関与」、コミットメントと呼ばれる大事な人間の心の特徴です。他者にまるきり関心のない人は、心理テストでは関与の低い人と呼ばれて、人間関係づくりの苦手な人、内向性度の高い人として分類されます。

でも、ここがポイントです。人と付き合うのは、実はとても勇気がいる作業なのです。特に相手のことが嫌いな場合や、逆に好意がある故に緊張して何も言えない場合があるからです。さて今回は「告白」をテーマに対人関係の【勇気】についてチェックしてみましょう。

Lesson8.勇気 その3

早速セルフチェックをしてみましょう。回答は4パターン【A.いつもそうである】【B.ときどきそうである】【C.たまにそうである】【D.全く違う】があります。セルフチェックの後は心理分析と合わせ、その対策もご紹介。自己分析して、明日からのあなたがさらに一歩前進するためにトライしてみてください。

回答にはそれぞれ点数があります。3回のレッスン(自信・勇気・リラックス各1回が1クール)の終了後に総評があるので、各レッスンの点数を控えておくと便利です。

 Q.好意を持っている男性に、気持ちを伝えられず、友情以上に踏み出せない

[A]いつも(1点)
[B]ときどき(2点)
[C]たまに(3点)
[D]全く違う(4点)

 

[A]の人の性格傾向と心理分析
自尊感情と予期不安の大きな、慎重派な性格です。いつも相手を遠くから見ているか、仲間としてわいわい騒いでいるけれど、好意は一切口に出せないあなた。その心には、もしも好意を口に出して嫌われたら“自分がみじめになるだろう”という心理学での「予期不安」または「期待不安」があります。まだ行動していないのに、先回りして失敗を予想して、自分が傷つくのを避けようとする心の防御が強いタイプです。

対策
対人関係はあなたが一方的に決めるものではありません。あなたが行動したことに相手がフィードバックをして、そこではじめて対人関係が完成します。ということは、あなたの発信した好意が受け入れられて、彼との関係が恋人関係に移行する確率は、冷静に考えたら50%だということです。フィフティ・フィフティの勝算がある事柄に対して、どのような結果が出るかは、実はあなたの行動次第なのです。さらに言うと、今のように常に心を隠していたら、いつの間にか彼は他のもっと積極的な女性のものなっているかもしれません。「ダメだったとしても、それで私の人生が終わるわけじゃない」としっかり口に出して言ってみましょう。しかも、男性は彼ひとりではないのですよ。

[B]の人の性格傾向と心理分析
慎重派な性格です。多くのキャリアパーソンがあなたと同じです。振られてしまっても、誰かに気兼ねする必要もないのですが、もし相手が仲の良いグループや、近しい存在の場合、噂が広がったりしますね。そうなると、今までと同じ人間関係を続けていくことに困難が生じるかもしれません。そう予測ができて、配慮ができるタイプなので、仕事では信頼も厚く、うまく仕事をこなしている人ですね。言わばあなたはいつも「石橋をたたいている人」なのです。

対策
「いつまで石橋をたたいているか」。それが問題です。2人の関係を慮るうちに、仕事が忙しくて1年ぐらいあっという間に経ってしまいます。ここは自分の気持ちに期限をつけることが肝心です。仕事で言えば「締め切り」のようなものです。例えば、今年中には必ず好意を伝えるとか、今度の誕生日の時に……という具合です。慎重すぎると「Time and tide wait for no man――歳月人を待たず」となって、あなたも彼も歳を取るだけ。タイミングが大事です。