労働時間の上限規制は必要か?

長時間労働については、規制として上限を設けるべきかどうかで意見が分かれた。例えばベンチャー企業をよく知るプロノバの岡島氏は、ベンチャー企業の場合、段階(ステージ)によって長時間労働が必要な時期があり、企業成長のために望んでやっている場合もあるという。「大企業と同じ規制を課すのはどうか」と岡島氏。人も企業も成長の段階により違うのではないか、と問いかけた。

少子化ジャーナリストの白河氏は、日本と真面目な国民性が似ていると言われるドイツの事例を紹介した。ドイツでは週48時間労働などの上限があり、さらにはインターバルとして休息時間を確保しているが、これが勤勉な労働者の働き過ぎにブレーキ役を果たしているとの見解を示した。さらに1人当たりの生産性はドイツの方が高い。なお、“36協定”をはじめ日本では長時間労働が可能な環境があるが、ワーク・ライフバランスの小室氏によると、大企業の約7割が月200時間の残業で従業員と合意しているという。一方で企業は、上限設定に反対しているのではない、という。他社が24時間の顧客サービスをやるから自社も……という一種の“泥沼戦争”から脱したいと思っている、と明かした。

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ラウンドテーブルで挙がったプロセスの簡素化、情報共有はITの得意とするところだが、日本企業ではITの戦略的活用が進んでいないという問題も提起された。

ITの戦略活用を課題に挙げたJ-Winの内永氏は、成功するIT導入のためには、導入時の業務プロセス、業務方法、米国企業では当たり前とされるジョブディスクリプション(職務記述書)、責任権限、決定フローなどを明確にすることがまずは必要だとする。「明確にしなければ、アウトプットを評価できない。そうなると、ただ“頑張ればよい”になってしまう」という。これは長時間労働に陥りやすい。

内永氏は、「“私、ITがダメなんだよねー”という日本のCEOがいるが、リーダーが技術を理解する必要がある。勉強してほしい」と厳しい。「日本では会社の利益におけるIT投資が低いが、世界においてその投資は戦略的なものになっている。どんどん差が開いていく」と危機感を募らせた。そして、現在のように総務省と経済産業省が担当するのではなく専門の「IT省庁の設置を」とも呼びかけた。

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http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page23_001408.html

撮影=末岡洋子