自らが“ゲームチェンジャー”になる、という覚悟

国連開発計画のクラーク総裁はニュージーランドで初の女性首相となった人物だ。「前職の首相になるに至るまで、女性初と言われるリーダーのポジションを数多く経験し、さまざまな“ガラスの天井”を破ってきた」と笑う。それらのタフな自分を形成したベースには、ニュージーランドに平等な教育の権利があったからだと言う。またリーダーに必須なのは、男女問わずにネットワークだと説き、ダイバーシティは永続性のある変化をコミュニティや社会に与えるが、そのためにはジェンダー平等が必須、なぜなら人口の半分は女性なのだから、と自身が歩んできたキャリアを振り返り、力強くメッセージを発した。

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写真は「ダイバーシティとリーダー」シンポジウムのパネラー。左上から時計まわりに、国連開発計画のクラーク総裁/ハーバード・ビジネス・スクールのヒル教授/BTジャパンの吉田CEO/スウェーデンのヒレルソン政府男女平等雇用委員会委員。

ハーバード・ビジネス・スクールのヒル教授は、リーダーについて次のように語った。「女性がリーダーシップを発揮するためには、さまざまな条件が必要でしょう。まずは組織としてスターを育成しなければならない。能力のある人材に適切なOJTを施すのです。行動や経験からしか学びはありません。まずはやってみなければ。その上で女性自身も、変化をもたらし時代を変えていく“ゲームチェンジャー”として機能する、という意識を持つこと。さまざまなギャップを埋める役割を担うのです」。また重要なのは、違いを最小限にまとめるのではなく、組織の文化や能力を調整し、人々の違いを最大限に利用して、ブレークスルー型のイノベーションや問題解決を図ることだと言う。それらが今リーダーに求められていることなのだ。イノベーションを成功に導く鍵は、多様性にあることに間違いはなさそうだ。

BTジャパンの吉田氏は、ジェンダーダイバーシティが叫ばれる今、“和”の精神、ハーモニー(調和)が必要だと説く。そこから持続可能な未来像と対峙ではなく包括する策を見い出す、という精神性に訴えた。またダイバーシティなしに今後成長の道はないとし、さらにその上で、リーダーとなるために、風を起こす人であれと、聴衆に訴えた。

スウェーデン政府男女平等雇用委員会委員のヒレルソン氏は、5人の子供の父親だ。自国の男性参加型の育休制度を紹介し、日本の追随を歓迎するメッセージを残した。現状日本では、育休を取得した男性社員への冷遇が少なからず横行している現実がある。一方でイクメンなど、子育てに積極的な男性は増加しているが、全体の環境を考えると育休の取得まではなかなか浸透が難しい。ヒレルソン氏によると、スウェーデンでは子供を抱っこする男性を“マッチョ”だと見なすらしい。日本男性の進化形、マッチョ型イクメンの出現……そんな日が待ち遠しい。