意思と意志、想いが生み出す人間の物語

“業界を躍進し続ける姿”と“誰にも言わなかった若年性パーキンソン病との戦い”このふたつの宿命を背負った松村厚久氏の「(自分のことを)書いてほしい! 出版社は幻冬舎で、作家は小松成美さん」という“意思”、松村氏の友人であり、著者・小松さんの大いなる理解者でもある幻冬舎社長・見城氏の“意志”、そして小松さんが最も信頼する編集者・菊地さんの“想い”の集約が、この本の出版を実現に導きました。

構成は「現在」がプロローグとなっており、「病気の告白」「仕事への挑戦」「松村氏の少年時代」「仕事の苦悩」「素顔の松村氏」「これから」など、過去と現在、そして未来が交差し、まるで“松村厚久氏の人生のフィルム”を見ている(読んでいる)感覚になるのです。時には身内の言葉、時には社内の部下、外部の友人の証言が挟まれ、頭の中でその映像がカラー、モノクロ、セピア色、フラッシュになる瞬間も。まさにこの「構成力」は、ノンフィクションを書き続けてきた著者の力量と、担当編集者のチカラの結晶と言えるでしょう。

「パーキンソン病の病状は常時、松村につきまとう。けれど彼は少しもこの病に動じてはいない。人前に出て話し、笑い、動き続ける体がソファーに倒れ込んでも、座っている椅子からずり落ちて床に座り込んでも、それが松村厚久だと淡々とやり過ごす」(本文より、抜粋)

若年性パーキンソン病である松村氏への取材は、「すべてお話し、お答え致します。何でも聞いてください」という松村氏と、彼の体力と気力を気遣い、しかし情に流されるようなことは決してあってはならないという小松さんの、まさに“熱”と“熱”の戦いだったと想像されます。結果、気迫のノンフィクションが生まれました。著者・小松さんは、この作品で作家としての次なる場所、はるかに高いステージに立った、と言っても過言ではないでしょう。