女性マネージャーへの3つの提言

さて、冒頭の「女性マネージャー(課長職)になるために必要とされる資質」についてまとめましょう。今は、私が生き抜いてきた時代と違って、安倍内閣の方針により、女性の躍進が求められるようになりました。これからマネージャーを目指していく女性もいれば、すでに会社によって管理職への道が開かれている30~40代の女性もいるかもしれません。私の経験から、そんな皆さんに提言したいことは3つあります。

森本さんの胸元には、現在、代表取締役社長を務める株式会社ココミーユが販売するベビーパールのネックレスが。

(1)「武器力」
まずは、自分なりの「得意分野」をつくってください。言い換えれば、それが「武器」を持つことになります。これは現場で経験したことの延長線になる場合が多いと思いますが、どんな専門的なことであれ、その得意分野を極めていく過程と成果で評価も上がり、同時に、見える世界も広がります。その結果、マネージャーとなる時には、自分の武器から派生する指針のようなものまで身に付くようになります。私の武器は「マーケティング」でしたが、新しく出会うことにも、マーケティング視点から見ることによって正しいジャッジができるようになっていましたし、また、マーケティングをマスターするまでの勉強と努力が自信となり、マネージャーとなって初めて経験することにも真摯に向き合うことができました。

(2)「コミュニケーション力」
マネージャーになれば、立場の上、下、横と、付き合う人の数が変わってきます。しかも付き合わなければならないメンバーには、さまざまなキャラクターの人がいます。マネージャーにはチームワークづくりが要求されますので、どんな人ともきちんと仕事をしていかなくてはなりません。そのためには、コミュニケーション力を磨くことが大切です。それは、その一人ひとりを理解することから始まります。相手の立場になって考え、話し方や接し方さえも変えながら相互理解を深めていく。これによって、本質的なコミュニケーションが成り立つことを覚えてください。

(3)「人間力」
マネージャーになるとチームとしての成果をアップさせていくことが求められます。そのためには、メンバー一人ひとりのモチベーションを上げていくことを考えていかなければなりません。そこで重要となるのは、謙虚な姿勢です。肩書きを振りかざしても、メンバーは反発するだけです。部下と同じ視線で向き合い、心を開いて話をしながら、部下を大切にする。これを忘れないようにしてください。ただし、ビジネスの現場ではさまざまなことが起こりますので、力強いリーダーシップも必要となり、部下に毅然とした態度で臨まなければならない場面も出てきます。そんな時であっても、メンバーとの信頼関係を崩さないようにするためには、チームをまとめるための人間力を磨いておくことが大切です。「謙虚」と「毅然」、このバランスを考えながら、マネージャーとしての「人間力」を培うように心掛けてください。

ここまでが、外資系企業2社で学んだ「マネージャー」として大切なことです。この後、私はさらに外資系企業2社で、部長、事業部長といったポジションを経験しますが、そこで学んだことは、次回、お話したいと思います。

森本道子(もりもと・みちこ)
株式会社ココミーユ 代表取締役
男女雇用機会均等法の施行前である1983年に大学を卒業。日系大手食品会社に就職した後、日系企業2社に勤務。慶應義塾大学ビジネス・スクールにて経営学のMBAを修得した後、「ジャガー・ルクルト」や「オメガ」といったグローバルな時計ブランドを扱う外資系企業4社にて、マネージャー、ディレクター、事業責任者として活躍。2013年に長年の夢であった起業を目指して独立、日本初のベビーパール専門のジュエリーブランドを提供する株式会社ココミーユ(http://coco-mille.co.jp/)を設立。代表取締役社長として現在に至る。

撮影=石井雄司