生き残るのは情報を発信し続ける街

その一方で同ランキング不動のトップ3を占める、東京都の吉祥寺と自由が丘、神奈川県の横浜といった街もある。ここまでの記述で、これらの街と、急浮上し消えて行く街との違いはもうお分かりになったことと思う。

トップ3あるいは上位常連の街では、常に情報が発信されているのである。テレビ、雑誌、WEBその他で取り上げられることが多く、人は知らず知らず、その街の情報に接している。だから、住みたい街と聞かれた時に、まず、それらの街が頭に浮かぶということになるのである。

ここで問題になるのは、誰が情報を発信しているかである。再開発の場合には、そこにできる住宅、商業施設等の開発事業者が情報を発信するが、終わってしまうとそれまで。

それに対して、コンスタントに情報が発信されている街では商店街、商業施設、個店、そこに住んでいる人、行政に至るまでさまざまな団体、個人がその発信元となっている。言い換えればコンテンツの多い街ほど情報発信量が多く、それが人気の源となっているわけである。

例えば東京を起点にした中央線沿線には個性的な街が多く、商店街、祭りなどと情報発信も多いが、吉祥寺が頭ひとつ抜けているのはそこに複数の大型商業施設、公園などの他の街にないプラスアルファのコンテンツがあるからである。逆に再開発が弱いのは単一のコンテンツしかないからとも言える。

東京都武蔵野市と隣接する三鷹市にまたがる吉祥寺の街。緑に恵まれた公園や動物園などがあり、子育ての環境にもよいと人気の街だ。写真は井の頭公園。

以上のことを踏まえ、再開発をきっかけに住む場所を検討するというのであれば、再開発以外に、その街には何か魅力的なコンテンツがあるかどうかを考えてみることである。再開発が終了し、その情報が発信されなくなっても人を惹きつける何か。それがなければ再開発は一過性のものでしかない。長く住もうというのであれば、もう少し、何か、例えば街の個性を示す情報などが欲しいところだ。

具体的にはどのような情報が発信されているか、その内容と量をチェックすることである。例えば食べログのような飲食情報サイトでその街にどんな店があるかを見てみよう。

そこでチェーン店しかない街は飲食情報について情報発信が少ない。チェーン店は個別店の情報を発信することはないためである。あるいは商店街のホームページでどのようなイベントがあるか、そこに人が集まっているかどうか。その他、人を集めるイベント、名所、有名店などがあるかどうか。

もっと細かく見るなら、その街に住んでいる人による、街の情報サイトがあるかどうか。情報量、情報源が多い街のほうがベターであることは言うまでもない。

最後に街歩きのプロとして一言付け加えたい。減少する人口を取り合う時代になりつつある今、本当は自治体や鉄道事業者は情報を発信し続けるべきである。実際、子育てファミリーに人気の千葉県流山市は子育てによい街と自ら発信し、それに応じた施策を用意することで、子育て世帯増を実現している。

今後は自治体、鉄道事業者がどのように情報を発信しているかを見ることも、その街の将来性を占い、買うに値するかを考慮する上で大きなポイントになってくるのではないだろうか。

中川寛子
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。