不適切な会計処理の影響はたかが知れている?

東芝の有価証券報告書によれば、会社は中長期にわたって年間6兆円前後の売上高(連結ベース)を維持してきました。2008年度から2014年度第3四半期までの間、累計売上高は41兆8529億円となります。その中で、今回の不祥事により明らかになった東芝の売上高過大計上額は149億円。割り算をすると、それは全体売上の0.04%という結果となります。裏返せば、これまで開示されてきた東芝の売上は99.96%適切だということになります。149億円は金額のみを見れば多額ですが、東芝の規模からすると不適切に計上された部分は重要性が乏しいことが言えます。

会計上、企業単体ではなく、子会社などを含めた企業グループ全体の金額を指す際は「連結ベース」という用語を使う。親会社と子会社などの複数社の財務諸表を合わせたものを「連結財務諸表」と呼ぶのに対し、「単体財務諸表」は1社のみの財務諸表を指す。

それでは利益はどうでしょうか。利益至上主義の社風があるなか、東芝は過大計上した売上の10倍以上もの額の利益を嵩上げしてきました。2008年度から2014年度第3四半期までの間、累計の税引前利益は5811億円なのに対し、そのうち1518億円が水増し分だと判明しました。割り算をすると、利益の26.1%が不適切だという計算になります。3割近くも嵩上げされていたため利益に与えるインパクトは大きいです。しかし、それが企業の根幹を揺るがすほどのものだとは言い難いのではないでしょうか。少なくともそれにより経営破綻に陥るほどのことはないように考えられます。

以上、東芝の不適切な決算数値は過去の粉飾事例などからすれば巨額なのですが、会社の業績に与える影響から考えると、致命傷とはならないことが割り算により明らかになりました。

そして、東芝は実体のない架空取引をでっちあげたのではなく、既に発生している取引に関して、認識の時期をずらすことで不適切な会計処理に至ったことを考えれば、短期間での期間損益こそ損なわれるものの、長い目で見ればいずれ帳尻が合うようになります。では、不適切な会計はいかにして行われたのでしょうか。