角度だけを聞くと少し浅いように感じるかもしれませんが、作業をしながらの挨拶は、「会釈」よりも簡単な「目礼」になっていることが多いものです。頭を下げる角度は10度くらいで、一瞬目線を下げるだけ。意識しないとなかなか下がらないのが私たちの頭です。お客様に対しても、忙しさのあまり、ながら動作になってしまい、うっかり「目礼」で済ませている可能性もあります。「自分は大丈夫かな」と心配になった人は、ぜひ一度鏡の前で自分の姿を確認してみてください。背筋が伸びていなかったり、顎を前に突き出すようにしたりして、相手に失礼な印象を与えるお辞儀をしているかもしれません。

“正しい”名刺交換で優位に立つ!

名刺交換の際は、お辞儀だけでなく、その後のアイコンタクトも重要です。名刺を受け取ると、頭を下げた状態で名刺ばかりを気にしてしまい、相手の顔を見ていない人も多いのです。しかし、名刺はあくまでもネームカード。相手の分身で大切なものではありますが、主役は名刺を渡した本人です。名刺を受け取ってサッと名前を確認したら、相手の顔を見ましょう。相手の視線が戻ってくる瞬間を逃さずに目を合わせ、そのままの状態で「○○様ですね。よろしくお願いします」と言うことができれば、心理的には相手をお迎えしたこととなり、一歩リードといえます。相手に感じがよい印象を残すことができるでしょう。

名刺交換は、秘書にとってある意味戦いの場ともいえます。というのも、お客様がどのような方か、名刺交換をしながら判断する場合もあるからです。名刺をやりとりする一瞬で相手を理解し、判断して、次の瞬間には「あいにくですが、不在にしておりまして……」とお断りしなければならないこともあるでしょう。だからこそ、名刺交換の場で心理的に相手を迎え入れる余裕が必要となるのです。

場面に合わせた美しいお辞儀とアイコンタクトで、相手の心をグッとつかんでください。

 プロ秘書からのメッセージ 
名刺交換は、秘書にとってある意味戦いの場である

中村由美(なかむら・ゆみ)
コンサルタント会社の社長秘書を経た後、株式会社壱番屋に入社。創業者・宗次徳二氏をはじめ、3代の社長に仕える。日本秘書協会(元)理事、ベスト・セクレタリー、秘書技能指導者認定、サービス接遇指導者認定。カレーハウスCoCo壱番屋創業者(宗次夫妻)秘書。著書に『日本一のプロ秘書はなぜ「この気遣い」を大事にするのか』(プレジデント社刊)(http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=1730)などがある。