「質問」とは人々を動きやすくするツール

(別室にて)

A「Bさん、さっきもらった資料なんだけど、実はちょっと思っていたものと違うんだ。だから、少し話をしてから手直しをしてもらいたいんだ」
B「分かりました。どこを直せばいいですか?」
A「その前に聞きたいことがるんだけど、いいかな? この資料、どういう想定で作ってた?」
B「明日の打ち合わせで使うからデータをまとめておいてって聞いていたので、まとめてみました」
A「まとめるってのは、データを一覧で見えるようにしたってこと?」
B「はい。そうすると見やすいかと思って」
A「なるほど。ところで、明日の打ち合わせ、誰が来るか知ってる? その人たちに、この資料で何を分かってもらえればいいと思う?」

今回のやり取りはいかがでしょうか? AさんはBさんに対して修正点を指摘するのではなく、Bさんがどういう認識で作業していたのかを聞いています。おそらく最後の質問の後、BさんはAさんが何を問題視しているかを把握することができたのではないでしょうか。

本当の問題を共有し、人々が動けるようになるためのツールとしておすすめしたいのが「質問」です。質問にはさまざまな力がありますが、今回注目したいのは、ロジカルシンキングラテラルシンキングという2つの視点から問題状況についての理解を整理し、互いの認識をすり合わせるように問いかけていくという方法です。次回はこのロジカルシンキングについて、第3回ではラテラルシンキングについて具体例を交えながらお伝えしたいと思います。

清宮 普美代(せいみや・ふみよ)

株式会社ラーニングデザインセンター代表取締役、日本アクションラーニング協会代表、OD Network Japan 理事、WIAL公認マスターALコーチ、青山学院大学経営学部 客員教授。
東京女子大学文理学部心理学科卒。毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)にて事業企画や人事調査などに責任者として携わった後、渡米。ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士取得。マーコード教授の指導のもと、アクションラーニングの調査・研究を重ねる。帰国後、2003年株式会社ラーニングデザインセンターを設立。著書に、『質問会議』(PHP研究所)、『「チーム脳」のつくり方』(WAVE出版)、『対話流』(三省堂)、『20代で身につけたい質問力』(中経出版)。