大切なのは全体像の共有

人が動いてくれない理由は、「本当の問題の共有」と「動機づけ」、この2つができていないところにあります。今回は前者について注目したいと思います。本当の問題が共有できていないというのは、つまり相手と自分が本当に取り組むべき問題は何であるかについての理解が共有されていないということです。まったく違うものを見て作業を進めようとしている状態とも言い換えられます。

大事なのはメンバー間で自分たちがどんな問題に対してアプローチしようとしているのかが共有されていることです。各人が実際に行う業務は別々のものだとしても、その業務が何のために行われていて、どういう意味を持っているのかについて共有されていなければ、全体感の無い単なる「作業」になってしまいます。

共有するといっても、単に同じ情報を知っているというだけでは意味がありません。人は自分にとって意味がないと思う情報についてはすぐに忘れてしまいます。また、情報の前提となる諸条件などが共有されていないと意味を成さないので、情報だけを伝えてもあまり意味がありません。必要なのは、単なる情報の共有ではなく、その背景を含めた全体像を共有することです。

それでは、前述の例を使って「本当の問題を共有する」ことに挑戦してみましょう。先ほどは頼んでいた業務に若干の違和感を覚えて後処理を引き取ったAさんですが、自分で処理するのではなくBさんに戻そうと思い直しました。