一方、「樹木葬」は墓地として許可を得た場所に遺骨を埋め、墓石の代わりに樹木を墓標とする葬法だ。99年から始まった樹木葬は、自然志向の高まりで、静かなブームとなっている。地方の里山を守ろうと開設された里山型樹木葬や、都会の霊園内の1エリアにできた都市型樹木葬など多様である。

樹木葬のもう1つの特徴は、継承を必要としない点にある、事実、樹木葬を選んだ人の多くは、「自然に還ることができる」を理由に挙げ、次いで「継承者がいなくてもいいから」となっている。

一般のお墓は「先祖代々之墓」に象徴されるように、継承を前提としてきた、しかし近年、家族形態が変わり一代限りの核家族が主流となった。血縁や地縁でつながり、強い共同体意識に支えられた時代から、家族以外の人々ともつながる「ゆるやかな共同性」へと社会が移行していることが影響を与えているといえるだろう。

一墓所の使用料は、形態や地価、使用人数によっても異なるが、40万、50万円が多い、また会員制で生前の年会費を徴収しているところが多い。

NPO法人エンディングセンターの樹木葬は、桜の木を墓標とする「桜葬」(商標登録)を行っている。大きな桜の木の下に、個別区画が隣同士並んで1つの墓地をつくる集合墓の形態で、2005年に東京・町田市の民間墓地の一画につくられた。現在では個人、夫婦、家族用それぞれの区画を設けている。桜が満開になるころに行う合同慰霊祭には、多くの人たちが参列して故人を偲んでいる。