それでは、女性がブランクを経ながらもキャリアアップしていくことは難しいのでしょうか。ここで、有効な方法を提案したいと思います。それは、「自分の市場価値を高める」という観点からの“転職”という方法です。

前述したように、1つの会社に勤め続けることを前提としていた今までは、出産などによるブランクが、年功序列のルールの中で不利となることは否めませんでした。しかし「ブランクはあって当然のもの」と発想を転換し、ブランクによるキャリアの不連続をその後のステップアップの障害にしないように、転職市場を活用して別の職場で働く道を創り出してはどうでしょうか。そのためには市場価値を高めることが必要になります。

市場価値を高めることで得られるもの

「市場価値を高める」とは、「仕事の経験、能力を活かすことで、社内の評価軸(社内ルールや手続きの習得度、勤続年数等)だけではなく、社外でも通じる価値を身に付けること」を言います。そして、これにより、従前よりも高い「報酬」を手にすることができるのです。

ここで言う「報酬」とは、お給料、お金のことだけを意味しているわけではありません。自分が仕事を通じて得られるものすべてを指します。その1つとして、たとえば「成長」が挙げられます。転職することによりお給料が下がったとしても、自分の成長に結びついて、さらに次の会社へ転職するときに今の会社にずっといるよりもぐんと自分の価値を高められそうだ、ということであれば、それは転職によりもたらされる立派な「報酬」となるのです。

あるいは、レベルの高いメンバー、ということもあるかもしれません。違う環境に身を置き、新たに自分よりも優れた人たちに出会って刺激を受けることで、主体的に仕事を頑張ろうという気力が湧いてくる、そんなことも「報酬」になるでしょう。

連載第1回目の「『働き方年表』で今こそ未来を考える ─仕事、結婚、出産」(http://woman.president.jp/articles/-/370)でご紹介した「小紫式働き方年表」をご覧いただけるとわかるとおり、実は人生において「仕事をする期間」は思った以上に長いものです。出産、育児によるたった数年のブランクが、その後の数十年働ける間ずっと不利に作用する、というのは本当にもったいない。むしろ、そのブランクを意識し、キャリアを主体的に自分で考え、積み重ねることで、職場と報酬を変えながら仕事を続けることが十分に可能になってきています。