駅から遠い高価格エリアの謎解き

首都圏のように鉄道交通に依存する割合の高い場所では、土地の価格は駅から遠くなればなるほど、つまり利便性が低くなるほど安くなるのが基本だが、駅からは遠いのに周囲より高くなっている場所がある。その理由は現地に行ってみれば分かる。

中目黒駅周辺であれば、それが顕著なのは目黒区立西郷山公園周辺エリアである。西郷山公園に行ったことがある人ならご存知だろうが、この公園は高台にあり、中目黒駅はそこから坂を下った場所にある。

当然、坂の上は眺望、日照に恵まれており、亡くなった演歌の女王の住まいもこの地にあった。お屋敷と言うにふさわしい広壮な住宅が建ち並んでいる一画なのである。価格を見ると1平方メートルあたり90万円、85万円などとなっており、坂の下で同公園と隣接するあたりが65万円。「住環境の良さ」が1平方メートルあたりで20万円以上の差となっているのである。

周辺より明らかに安い土地には理由がある!

逆に周辺と比べて明らかに安い土地もある。

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(左上から時計回りで)東京都目黒区上目黒3丁目周辺の路線価図。実際の取引価格ではないのでご注意/【1】途中から階段になっている道。階段上と下では1平方メートルで8万円の価格差がある/【2】左の道は崖の上の平坦地を走り、道幅も広いが、右の道は崖を回り込むように走る細い一方通行/【3】道幅が違うだけで同じ道なのに手前と奥では1平方メートルあたり4万円の差が生じている

例えば、東京都目黒区上目黒3丁目、区立烏森小学校の周辺(写真1~3参照)は高低差があり、道路が途中から階段になっている場所も多いのだが、そういう場所の価格は低くなっている。階段の上が1平方メートルあたり44万円であるのに対し、階段の下は36万円、枝分かれして崖を回り込む一方通行の道は37万円など、現地の様子と路線価図は見事に一致する。

階段があれば住宅建設時に機材、車が入らない上に、災害時にも逃げにくい。急な崖は崩落の危険もある。そう考えると、道幅や道路形状、地形は「安全性」に影響のある要素であり、土地の価格にはそうした要因も反映されているというわけだ。