「スーツ姿でお迎え」は最先端の働き方

でも女性も、仕事でもっと欲を出していい。積極的に手を挙げてチャレンジしてほしいですね。仕事に意欲がある、ということと、残業ができない、のは別のことです。残業ができないとやる気がないと思われるのではないか、などと心配せず、堂々と仕事への意欲を示して欲しいと思います。そして子育てでも、同じように欲を出してよいと思います。「周りがみんな、子どもを延長保育に預けて遅くまで仕事をしているから、自分もそうしなくてはいけない」というものではありません。自分は早く子どもを迎えに行って、7時にご飯を食べさせたいと思うなら、そこはちゃんと欲を出して貫いてもいいんです。

遠慮し無理をして、「本当はこうしたかったのに」と後悔したり、子どもに罪悪感を抱いたりするのは、良いことだと思えません。短時間でも正社員として働く、それは、これまで多くの日本女性が夢に見てきた働き方です。それがようやく選択できるようになったのです。これから、みんながそれぞれ、少しずつ欲を出して、短時間でも質の良い働き方や子どもとの関わり方を目指していくことが、日本の社会全体のワーク・ライフ・バランスを形づくっていくように思います。

仕事を早く切り上げ、夕方にスーツ姿で一生懸命自転車をこいで子どもを迎えに行く女性たちの姿は、日本企業における最先端の働き方を表していると思います。彼女たちがはつらつと働くことが、日本社会全体にとって、とても大切なことなのです。

矢島洋子(やじま・ようこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 経済・社会政策部 主席研究員 兼 女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室 室長。中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。2004年~2007年内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官。少子高齢化対策、男女共同参画の視点から、ワーク・ライフ・バランスや女性活躍関連の調査・研究・コンサルティングに取り組んでいる。著作に『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』(ミネルヴァ書房/共著)、『介護離職から社員を守る』(労働調査会/共著)等。

構成=大井明子