【ここがクリエイティブ
  @プレセナ・ストラテジック・パートナーズ代表取締役 高田貴久】

セゾンファクトリーは、「新しい成功パターンは必ずしも過去の成功例に倣わない」ことを示しています。成熟市場では、他社と同じことをしていると必ず価格競争に陥ります。同社の齋藤社長は、「エルメスやシャネル」を例に挙げ、加工食品でありながら高級ブランドに倣うという戦略を打ち出したのです。業界内で過去に例のない、新しい成功パターンを求めた結果でしょう。

売上高の1.3%もの金額を4日間の展示会のために投下するのは、一見無謀に見えます。それにもかかわらず、同社が順調に成長してきた理由――それは「なりたい姿」「うまくいった状態」の明確なイメージがあることです。取材の中でも、フーデックス出展時には「展示場のある幕張駅が、コーポレートカラーの黄と黒の紙袋を持った人で溢れている」イメージが先にあったという話がありました。展示会に「商品ではなく店ごと」出展したのも、顧客に訴求できたときのイメージが先にあったからだと言えるでしょう。

普通は真っ先に考える「費用対効果」といった分析的な視点は二の次です。商品デザインからお店の売り場づくりまで、分析的に考えると不可解なこともすべて「なりたい姿のイメージに合うかどうか」で判断しているのです。

齋藤社長は、そのイメージを社員にも伝え続けています。

「セゾンファクトリーは何屋かと聞かれたら『セゾンファクトリーです』と答えなさい」。これは、商品そのものではなく企業を売る、つまり「ブランド」で売れる会社になろう、というメッセージ。シンプルな言葉により、「なりたい姿」のイメージが全社で共有されているのです。

(松田健一=撮影)