一族に学ぶリーダー学

ジェーンが創業者、エスティ・ローダーを祖母に持つことは【前編】で述べたとおりだが、その生い立ちはリーダーシップにも深く関わりを持っている。彼女がリーダーの鑑とするのは、祖母をはじめとするローダー一族。祖父や父など親族が同カンパニーの経営に携わっていたため、物心ついた頃からおのずと帝王学を学んできたのである。

親族から経営の帝王学を学んできたジェーン・ローダー。顧客や社員の声を傾聴する柔らかな印象の一方で、アグレッシブな一面も。

「経営者に囲まれた環境で育ったのは、私にとって幸運といえるでしょう。もちろん、社会人となってから出会った人たちにも、リーダーとしての理想像はたくさんあります。なかでも、尊敬してやまないのが、私の上司であるカンパニープレジデントのリン・グリーンです。彼女は私に“Cherish the past and invent the future”という言葉を教えてくれました。過去の礎を大切にしながら、未来を創造する。ビジネスのさまざまな場面で、この言葉を思い起こしています」

さらにもう1つ、ジェーンが仕事上の信念としているのが、祖母であるエスティ・ローダーの言葉だ。

“Never take no for an answer”
NOと断わられることを恐れてはいけない。

幼い頃から、そう教えられてきたのだという。

「どんなに頑張っても成功しないことはありますが、努力をしないで諦めたり逃げたりしていては進歩がありません。また、立ち向かった結果、解決法が見つけられたなら、それは成功体験となって、次の困難にも立ち向かうエネルギーになる。思い悩むこともありますが、そのときは人の話に耳を傾けるようにしています。立場も世代も異なる社員に会議に出てもらい、それぞれの意見を聞いていくと解決の糸口が見つかるということもあるのです」