座右の書、ありません

他の競技の選手から、コンディショニングやトレーニング方法といった専門的なことを質問されることはわりとよくあります。

そういうときは別に隠す必要もないので、「私ならこうするよ」と、自分のことはだいたい何でも話しますが、どうしたらいいかアドバイスしてほしいと言われると、ちょっと困ってしまいます。

私のやり方は、あくまで私にとっての正解。それが他の人にも当てはまるかどうかはわからないからです。

そう「ウチはウチ、ヒトはヒト」です。

私はいつもそうなので、私のほうから他のアスリートの方に質問したり助言を求めたりすることもまずありません。

同じ理由で、他のアスリートの方が書いた、心の整え方みたいな本も読まない。読んだらきっといいことが書いてあるんだろうとは思います。でも、自分は自分です。書かれていることを真似しようとは思わないので、そうしたら読む必要ないじゃないですか。

それに、困ったときは全部ポジティブに考えればいいという究極のプラス思考だと、あまり悩むこともないし、根性とか忍耐とかはレスリングでじゅうぶん鍛えてあるので、いまさら本から学ぶこともないなって感じです。

もちろん、そういう本を読んで助けられたとか、ヒントが見つかったという人もいるでしょう。そういう人はそれでいいんじゃないでしょうか。

ただ、私は私。

これは一生変わらないと思います。

※このインタビューは『迷わない力』(吉田沙保里著)からの抜粋です。

取材構成=山口雅之 写真=公文健太郎