決まった住居を持たず、インターネットカフェなどを泊まり歩いて暮らす“ネットカフェ難民”は、全国に約5400人(厚生労働省調査)。彼らがわずかな収入の支えにしているのは、日雇いなど短期の「スポット派遣労働」だ。

その派遣労働の現場で、いまトラブルが相次いでいる。07年8月にも人材派遣大手のフルキャストが、違法派遣をしていたとして、1~2カ月の事業停止処分を受けた。労働者派遣法で禁じられた港湾関連の仕事に登録スタッフを送り込んだことによる。神戸港に延べ6人の労働者を派遣し、ペットボトルの荷さばき業務に従事させたと報じられている。

「会社に拘束されず、契約本位に専門性を活かして働けるという派遣労働が、本来の意義を失っています。長期不況で人件費の削減を迫られた企業が、ホワイトカラーの仕事まで賃金の安い派遣労働者で代替するようになった。それに、1999年の“派遣の原則自由化”が拍車をかけたのです。就職難も重なり、無理な派遣要請や賃金低下につながりました」

こう話すのは、NPO法人・派遣労働ネットワークの理事長を務める中野麻美弁護士だ。著書『労働ダンピング』では、派遣労働者の厳しい現場を描く。

そもそも派遣労働は、86年施行の労働者派遣法により、ソフト開発や通訳など専門性の高い13業種に限ってできるようになった。それが規制緩和の流れの中で、96年には対象業種が26業種へと拡大。2004年には、製造現場への派遣も解禁された。

現在、派遣労働者の数は250万人超といわれる。そして、労働派遣市場、とりわけ軽作業に分類される製造現場などで起きたのが、派遣期間の短縮と賃金の切り下げである。通常1年単位だった契約期間は、3カ月単位(あるいはそれ以下)が最多となった。派遣労働ネットワークの調査によると、平均時間給もこの十数年で400円ほど下がったという。