予算を増やせばページビューは簡単に伸ばせる。例えば大手ポータルサイトのバナー広告の枠を買えばいい。だが、それで稼げるアクセス数はあくまで一時的なものであり、広告をやめればページビューは急激に下がってしまう。

発注する側のレベル次第。業者に「丸投げ」していないか?<br><strong>クリエイティブディレクター 田中耕一郎</strong>●1973年生まれ。2004年にProjectorを設立。「UNIQLOCK」はカンヌ国際広告祭でグランプリを獲得。
発注する側のレベル次第。業者に「丸投げ」していないか?
クリエイティブディレクター 田中耕一郎●1973年生まれ。2004年にProjectorを設立。「UNIQLOCK」はカンヌ国際広告祭でグランプリを獲得。

僕はユニクロの広告サイト「UNIQLO MIXPLAY(ユニクロミックスプレイ)」と「UNIQLOCK(ユニクロック)」の2つに、制作ディレクターとして携わってきた。その中で取り組んだのは、時間の経過とともにページビューが伸び続ける仕掛けをつくることだった。目指したのは「リンクポピュラリティ」を上げる、つまりユーザーがリンクを貼りたくなるようなサイトにすることだ。リンクが増えればアクセス数は加速的に伸び、ウェブ上での評判も高まる。それが持続的な集客をもたらすと考えた。

最初にターゲットとしたのは「ユーチューブ」だった。当時ユーチューブを使った広告はなく、注目されるのではないかという読みがあった。

そこで、ユニクロの衣服を着たダンサーが目を見張る踊りを繰り広げる映像「ミックスプレイ」を制作し、ユーチューブに流した。これは当たり、ユーチューブでのビュー数は今も伸び続けている。予想外だったのは、海外からも問い合わせを受けたことだ。テレビと違い、ウェブを使った場合には、広告効果が世界に波及することを確信した。

中身には苦心した。押しつけがましい宣伝ではなく、ユーザーに面白がってもらう必要があった。ダンスの映像としたのは、動画サイトを何度も見るうち、人気の高いコンテンツはダンスや歌など言葉を介さない直接的な身体表現であることに気がついたからだ。これはユニクロの商品である「服」とも相性がよかった。