好むと好まざるとにかかわらず、誰の生活にも投資が入り込んでいる。であれば、上手に付き合って、お金を賢くふやすのが得策。投資デビューするためにはどうすればよいのか、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんに教えてもらった。

投資は生きるための“たしなみ”になっている

日常生活の中でもモノの値段が上がっていることを感じる機会が多くなっている。このまま物価が上昇してインフレに突入すれば、現金や預金の価値は目減りしてしまう。預金金利と消費者物価指数の動きを見ると、すでに物価が預金金利を大幅に上回っている(図1)。これから豊かに暮らしていくには、必要な資金をどう準備すればよいのだろうか。

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※1年物定期預金の金利は1993年までは期日指定定期、1994年以降はスーパー定期の金利、金利はみずほ銀行(合併前は第一勧業銀行)のもの。年の途中で金利が変更されている場合、その年の最も高い金利を表示。消費者物価指数(CPI)は全国総合(生鮮食料品を除く) 指数で対前年比、出所は総務省、単位は定期預金、消費者物価指数共に%

ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんは「もはや投資は生きていくためのたしなみ」と指摘する。

好むと好まざるとにかかわらず、投資が生活の中に入り込んでくるからだ。例えば、確定拠出年金(日本版401k)を導入する企業が増え、社員は自分の退職金の運用先を自ら決めなければならない。何を選択するかで、20年後、30年後の受取額に2倍、3倍の差が出てくることもあるだろう。

一方で、仕事はリタイアする日がいずれ来るが、お金との付き合いは、一生涯続けていかなければならない。とすれば、上手に付き合っていったほうが得策だ。

上手に付き合う要素は、借りる、使う、節約するなど、さまざまあるが、今後重要になってくるのは、お金をふやす=投資という要素だ。

投資と上手に付き合っていくための最良の方法は、早いうちから経験を積むこと。なぜなら、投資は預貯金と異なり、絶対というものはない。早いうちから慣れ親しんでおいたほうが成功確率は高くなる。失敗をした場合のリスクも少なくて済む。

「投資デビューをするタイミングとして、今はとてもよい環境が整っているのも事実です」

ひとつは少額からチャレンジできるようになっていること。投資信託であれば、毎月1000円から積み立てが可能な銀行や証券会社が増えている。また、以前は証券会社の店舗に出向かなければ、投資信託などは購入できなかったが、いまでは銀行や郵便局の窓口でも購入できる。

さらにネット取引を利用すれば、自分のパソコンやスマートフォンが専用の“支店”になってくれる。都合のよい時間にいつでも取引が可能になっているわけだ。

選択肢も増えている。

「投資できる国や対象は扇が広がるように拡大しています」

政府の後押しもある。NISA(少額投資非課税制度)を利用すれば、年間100万円(16年から120万円)を最大5年間非課税で投資できる。

投資が重要になっているのは、公的年金の運用団体であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産配分を見てもわかる(図2)。公的年金は安定運用が基本だが、株式の比率を増やしてインフレに強い配分に組み替えている。

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出所:年金積立金管理運用独立行政法人HPより 旧、新ポートフォリオには許容幅あり 旧:国内債券±8%、国内株式±6%、外国債券±5%、外国株式±5% 新:国内債券±10%、国内株式±9%、外国債券±4%、外国株式±8%