小さな工夫やアイデアの積み重ねで人生を豊かにする家をつくれます

Yuuさん
一級建築士事務所 OfficeYuu 代表
住宅リフォームコンサルタント

本名は尾間紫(おま・ゆかり)。一級建築士、インテリアプランナー、インテリアコーディネーターなどの資格を持ち、これまで多様な住宅リフォームやインテリアの相談、プラン設計、工事にかかわる。一般の人向けには、業者選びからプランの立て方までを各種メディアで発信。一方、事業者向けにも、お客様が本当に満足するリフォームを実現するノウハウなどを研修やセミナーで提供している。

 

効率化の先にある生活の質の向上に着目を

──家事ということでは、キッチンも一つのポイント。どんなことに気を付ければいいでしょうか。

【Yuu】時間がなくて料理までなかなか手が回らない、とあきらめてしまっている女性は案外多いですね。でも、住まいの工夫しだいで料理にかかる時間や手間は軽減できます。

忙しくてこまめにスーパーに立ち寄れない女性なら、食材は週末にまとめ買いをしておくことが多くなるでしょう。そうなることを考えて、キッチンのそばに大きな食品庫や冷蔵庫を置くスペースをつくっておけば、食材の管理はぐっと楽になります。そして食品庫が充実していれば、自然と食生活は豊かになります。

家事の効率化や時短は働く女性にとって大切な視点です。ただ、「忙しいから楽に、簡単に」というだけでなく、その先にある生活の質の向上にも目を向けてほしいですね。生活の質が高まれば、人生そのものがより充実したものになっていきます。

──なるほど、ありがとうございます。一方、住まいづくりの具体的な部分では、リビングにこだわる方も多いと思います。トレンドなどはありますか。

【Yuu】リビングは家族が集まり、くつろぐ家の中心ですが、最近ではそこに「食べる場所」という機能が一体化しています。かつてのように「ご飯を食べた後、リビングでくつろぐ」のではなく、「食べながらくつろぐ」のが最近のスタイルになっています。ちょっと低めのダイニングテーブルを置き、そこで食事もするし、くつろぎもするという具合です。1つのスペースが2つの機能を兼ねているので、部屋を広々と使えるメリットもあります。

リビングで注意したい点は、とても散らかりやすい場所であるということ。その理由は、物が多いのに収納がないからです。対策としては、棚を1つ設けて、家族それぞれの私物の収納スペースをはっきりさせるのがお勧め。日常的に使うものを自分の部屋まで取りに行かなくてすむので便利です。

──そのほか、家の掃除をしやすくする工夫があればお願いします。

【Yuu】一つはお掃除しやすい設備や建材を選ぶこと。小さなお子さんのいる家なら、フローリングを漂白剤に強い素材にしておく。そうすれば、そそうのあったときも消毒を兼ねた掃除ができますし、ペットも飼いやすいでしょう。

2つ目はお掃除の邪魔者をなくしておくこと。例えば敷居があると、そこで掃除機が引っかかったり埃がたまったりしてしまいます。そこで、クローゼットの扉なども上吊り式にする。これなら、中まで一気に掃除ができます。

こんなふうに、住まいを一つ一つ見直していくと掃除の手間を減らし、余った時間を自分のために回すことができるようになります。

──最近はスマートハウスのようなエネルギー関係の話題が増えています。注目点はありますか。

【Yuu】2016年から、家庭向けの電力の自由化がスタートし、自分や家族の生活スタイルに合わせて、好きな事業者から電気を買えるようになります。そうした中で、HEMS(ヘムス。Home Energy Management System)は一つの注目ですね。これを使って、自宅の電力使用データなどを管理することで、より安価な電気などを選んで購入することもできるようになるでしょう。

一方、自宅で発電をするさまざまな設備などはすでに人気。今後の家づくりにおいては、エネルギーに配慮した設備や機器を選ぶか、選ばないかではなく、何を選ぶかがテーマになるでしょう。