職場の外で友人をつくるメリット

こうして上司としての役割と、友人としての役割の間に摩擦が生じることになります。残念ながら、常に上司と友人の役割を両立させられるとは限りません。それぞれの役割において求められる振る舞いや言動は違うのです。こうして、お互いに新しい関係性の中で適応することができず、今までの友情にヒビが入って関係が疎遠となっていく例は珍しくありません。

友情と職場の人間関係を切り離すことは可能なのか、という問いがあります。もちろん不可能ではありませんが、職場で上司と部下という関係になった2人が職場の外で全く別の関係を築くことは困難といわざるをえません。幸いにして私自身は、昇進のために友人を失ったという経験はありません。というのも、私の友人の大部分は全く違う分野にいる人たちばかりだったからです。友情と職場の人間関係が衝突する事態そのものがないわけです。

職場の外で友人をつくることには数多くのメリットがあります。いつも職場の人たちと一緒にいると、結局一日中いつまでも仕事を引きずることになりますのでストレスが増え、燃え尽き症候群につながることも多いのです。体にもよくありませんし、精神衛生上もいいはずがありません。

いつも似た地位や職業の人たちとばかり付き合っていたら発展も成長もありません。全く違うライフスタイル、考え方、職業を持つ人たちと付き合うことにより、ものの見方が大きく広がり、お互いに助け合い、ネットワークを広げることが可能になります。結局、女性が男性より昇進において後れをとるのは、この「顔の広さ」で差をつけられているという側面が大きいのではないでしょうか。

心理学博士 浦上ヤクリン
ドイツ出身。米国へ交換留学、英国でインターンを経験、2002年シェムニッツ工業大学で博士号取得、同大学で准教授。03年来日し、慶應義塾大学および多摩大学で非常勤講師を務める。専攻は心理学・人間工学。
(タカ大丸=構成 小川 聡=撮影)
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