相談内容で多いのは「新規事業の立ち上げ」

【田原】まだピンとこないけれど、具体的にどのような相談があるのですか。

【端羽】初期のころでよく覚えているのは、やはり新規事業のご相談でした。ある独自技術を持っている会社さんがあって、その技術を他の分野に転用したい、ついてはどの分野なら新規事業としてやれるのかを調べたいというお話でした。私たちがヒアリングをすると、農業への転用がおもしろそうでした。そこで、農業のトレンドに詳しい方と、生産現場で新しい取り組みをしている方のお2人をマッチングしました。結局、農業分野で転用しても新規事業として難しいという話になったのですが、お客様は「だめだということがはっきりわかってよかった」と喜んでくださいました。

【田原】なるほど。ほかにも、もう1つくらい紹介してもらえますか。

【端羽】インターネット系で実店舗を持っている会社さんから、「スタッフの接客レベルを上げたいので、おもてなしがものを言う業界の人を紹介してほしい」とご依頼をいただいたこともあります。このときは化粧品会社の方をマッチングしました。

アドバイザーの設定は「40代大手企業の課長」

【田原】企業側のニーズは、なんとなくイメージできました。一方のアドバイザーは、どのような人たちなのだろう?

【端羽】設定しているペルソナは、「40代、大手企業の課長」。現役で企業にお勤めの方が7割前後いて、残りがフリーランスや専門職、企業からリタイアした方です。

【田原】へえ、現役のビジネスパーソンが多いのですか。それは意外です。会社にバレても大丈夫なのかな。登録は実名制ですか。

【端羽】ビザスクへの登録は実名で、マッチング時にも相談者には実名で対応していただきます。ただ、サイト上では名前を公開するかどうかを選ぶことが可能です。

ビザスク社長・端羽英子氏

【田原】じゃ、サイトではほとんどの人が匿名ですか。

【端羽】私も最初はそうなると思っていました。ところが蓋を開けてみると、ほとんどのアドバイザーが実名を公開していました。とくにオープンなのは製造業にお勤めの方で、社名を公開している方も少なくありません。一方、金融機関の方は実名を伏せているケースが多いですね。謝礼も受け取らない傾向が強いです。

【田原】ん? 謝礼を受け取らないって、その人は何のためにアドバイザーをやるのかな。

【端羽】謝礼なしといっても謝礼が発生しないわけではありません。副業禁止などの事情がある人などに向け、謝礼を受け取る代わりに3つの認定NPOに寄付できる仕組みを用意しています。金融機関の方は寄付制度を利用されるケースが圧倒的に多い。自分の懐に入らなくても登録してアドバイスを行うのは、だいたい1パターンです。2つはセカンドキャリアを見据えて、自分の知見にどれだけの市場価値があるか知っておきたいという人。もう1つは、軽い気持ちで登録したら本当に引き合いがあって、謝礼を受け取れないから寄付をする人が多いです。いずれにしても、お金儲けを目的に登録している人は少ない印象です。