求心力は実績の積み重ねで決まる

私の代での大きな環境変化は、醤油製造が超成熟産業になったということです。私が若いころは醤油の売り上げだけで十分ごはんが食べていけました。近年、海外では日本食ブームに乗って需要が増しているのですが、国内マーケットは縮小し、業界全体の生産量は最盛期の3分の2までに落ち込んでいます。

その一方で、醤油加工調味料が増えてきました。めんつゆやポン酢醤油、すき焼の割り下といった分野です。昔は家庭で野菜を炊いたり魚を煮つけたりするときは、かつおだしに醤油やみりんを合わせたものですが、今は醤油加工調味料をベースにするのが一般的になりました。

講演後には参加者が濱口社長を囲んでグループ懇談の時間が。

私は2~3年前まで醤油加工調味料の商品開発に自ら携わっていました。入社してから社長直轄として商品開発の部門をつくったのです。当初は醤油そのものの調子がよかったので、商品開発と言っても誰もその必要性を理解しません。一部の役員からは「次期社長のおもちゃ箱だ」などと酷評されたものです。

ところが、商品開発を始めてみると、一つの新商品で新しく3億円程度の売り上げが立つという、今から振り返ると新商品開発の競争も激しくなく恵まれた状況でした。ポン酢や焼き肉のたれなど新商品を次々と出すうちに商品開発の活動は社内で注目されていきますし、だんだんと期待されるようにもなりました。

新商品の成功はそのまま私の実績です。実績が上がってくると周りの人たちも私の言うことに耳を傾けてくれるようになりました。それまでは私に面と向かって意見を言う人もいない代わりに、私が何か提案してもまったく反応がなく、無力感を覚えていたのです。

リーダーとして求心力を生むには、実績の積み重ねがとても大事だということです。