「キューバ革命」が起きた本当の理由

このキューバ裏面史には、多士済々の男たちが登場する。この物語の実質的な主人公といっていいマイヤー・ランスキー。マフィア随一の頭脳派といわれ、バティスタ大統領と組みハバナに犯罪帝国を打ち立てようとする。そんな彼らに魅入られ、キューバへの現金の運び役となる歌手フランク・シナトラ。キューバを視察に訪れた、上院議員時代のJ・F・ケネディでさえハニートラップで取り込まれてしまう。

こうした状況を一変させたのが「キューバ革命」だった。その立役者がフィデル・カストロとチェ・ゲバラである。彼ら革命軍は「打倒バティスタ」の旗を掲げて武装闘争を起こした。最初の蜂起には失敗するが、すぐさまゲリラ戦に転じ、59年1月に革命政権を樹立させる。当初はアメリカと友好的な関係を求めていたが、農地改革で対立。キューバは急速にソビエト連邦に接近し、やがて社会主義陣営の一員になる。

そして62年、キューバ上空を偵察していたアメリカの高高度偵察機(U2)が、核ミサイルらしきものが配備されていることを発見する。アメリカにしてみれば、喉元に短刀を突きつけられたようなものだ。ここから、核戦争のリスクをはらんだ「キューバ危機」がはじまる。ここではケネディ大統領は一転して英雄として奮闘、間一髪で世界的な危機を回避した。

この間、マフィアたちはしぶとく生き残り、余生のなかで地位と財産を守ろうとするが、時代の流れには勝てない。バティスタもキューバを追われ、スペインで72歳の生涯を閉じた。カストロこそ存命だが、今年4月、キューバ共産党大会に出席し「私がここで話すのはおそらく最後だ」と告げ、みずからの役割にピリオドを打った。

【関連記事】
ファーストクラスに乗る人が機上で読む本リスト
オバマの8年間で、アメリカはどう変わったか?
「三十六計」で読むチェ・ゲバラの勝因
『「防災大国」キューバに世界が注目するわけ』中村八郎・吉田太郎
知らないと落ちこぼれる入門書&プロ本【国際】