“糖尿病の怖さは合併症にある!”と、昔からいわれている。動脈硬化に始まって、脳卒中、心筋梗塞、白内障、緑内障、脂肪肝、インポテンス、肺炎、膀胱炎、糖尿病昏睡などなど数多く、全身に引き起こされる。とりわけ多いのが、3大合併症といわれる「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」。

今回は、脚の傷を放置しておくと壊疽に結びつき、脚を切断することにもなる糖尿病神経障害をとりあげる。

三大合併症の中で、最も早く症状が出始めるのが神経障害。糖尿病を発症して4、5年で出てくる。

「いや、私の場合は糖尿病と同時期に神経障害の症状が出てきた」

と、言い張る人もいる。それは、糖尿病と指摘されたのが、糖尿病を発症して3、4年経っていたからである。自営業の人でほとんど定期検診を受けていない場合に、そういったことが起きる。

神経障害は余分なブドウ糖が神経組織の中に入り、ソルビトールという物質に変化し、それがたまることで発症する。

また、脚の動脈硬化を起こして末梢血管の内腔が狭くなり、血流が悪くなる。すると、神経細胞に酸素や栄養が十分届かなくなるために神経障害が起きるのである。

神経障害での症状は、障害される神経によって異なる。大きく「多発性神経障害」と「自律神経障害」に分けられる。

多発性神経障害とは「運動神経」や「知覚神経」が障害された場合である。「手足がしびれる」「手足が冷たく感じる」「夜寝ているときにこむら返りが起こる」「筋力の低下」などの症状がある。さらに進行すると、熱いとか痛いといった感覚が鈍くなる。

たとえば、火傷をしてもそれに気付かず、火傷が悪化。また、傷が悪化して潰瘍を起こしたりすると、脚を切断することも……。年間約2万人の人が脚の切断に至っている、と推測されている。

一方、自律神経障害の自律神経は、生命を維持するさまざまな働きをし、心臓、肺、胃腸などの働きに関係している。それが障害されると、便通異常(便秘・下痢)、立ちくらみ、インポテンス、発汗異常、神経因性膀胱などが起こる。

治療は徹底した血糖コントロールで、加えて壊疽を起こさないためには、しっかりフットケアを行う必要がある。何か異常があったらすぐに主治医に伝えるようにする。

どうしても薬が必要な場合には「アルドース還元酵素阻害薬」を用いる。あとは、痛みに対しては鎮痛薬というように、対症療法となる。

 

食生活のワンポイント

糖尿病予防には「20分のウオーキングを1日2回、といった適度な運動」「十分な睡眠」「ストレス解消」「禁煙」を行うとともに、「頭で食べる!」ことをぜひ実践してほしい。

頭で食べるというのは、おなかの欲求にそのまま応えるのではなく、何をどう食べるかを頭で考え、そのときに最適な食事をする、ということ。

「ゆっくりよくかんで食べる」を行っていれば、食事量は自然と腹8分でストップするようになる。

気をつけなくてはならないのは、お酒をもう1本、もう1本と飲んでしまうこと。つまみを多く食べ、食生活を乱してしまう。

以上を留意したうえで、朝、昼、夕食を規則正しく食べ、栄養バランスのいい食事をする。主食、主菜、副菜、果物、牛乳・乳製品をよく考えて摂るようにする。

たとえば主菜を考えてみよう。朝に卵料理だったなら、昼は煮魚、夜は刺し身。このように変化させ、2日に1回は牛・豚・鶏肉が入ってもよい。副菜で野菜やきのこ、海藻、豆類を摂る。

「頭で食べる」を意識して続けると、自分自身で栄養バランス、カロリー量などが自然とわかるようになるから不思議だ。