反論できるのは真剣に考えている証拠

自分が直球しか投げないので、回りくどい言い方をする人より、最初から「結論はこうです」とはっきり言ってくる人のほうが私は好きです。

私自身も若手のころから年上の上司に向かって、思っていることをずけずけと言っていました。

こちらの言うことを鵜呑みにせず、納得できないときは「それは違う」と反論してくる人も大歓迎です。もちろん若手からの反論も喜んで聞きます。年齢は関係ありません。反論するというのは、ものごとを真剣に考えている証拠だからです。それに、社長だからといって、いつも100%正しいことを言っているとは限りません。私が10意見を言ったら、そのうち2つや3つは間違っていてもおかしくないでしょう。反論がなければ、その間違いは放置されたままになります。だから、貴重なのです。

ただし、反論するからには、私を納得させられなければなりません。私は学生時代に空手をやっていました。空手というのはもともとが護身術なので、自分から攻めるのではなく、先に相手に攻めさせ、隙ができたところを攻撃するというのが基本です。相手と意見が対立したときも、私はこの空手の姿勢をとります。

まずは相手の話をじっくり聞く。そして、必要な情報を調べているか、結論に至る道筋が論理的であるか――こうした点をチェックし、納得できなければ相手に「もう一度調べ直してこい」「結論の根拠をもっとロジカルに考えろ」と、アドバイスをすることもあります。

相手とうまくコミュニケーションをとるためには、自分の専門はもちろん、それ以外のことにも興味をもって、知識を増やすことが大切です。

私は大学は工学部を卒業していますが、大学院では経済学を学び、簿記などの実務を身につけるために入社後ひそかに専門学校に通っていました。知識をさらに増やすために、自分で学校に行くのもいいし、本を読むなどもいいでしょう。人に聞くのが一番早いかもしれません。

いまの時代は部門の枠を超えたコラボレーションから新たな価値が生まれます。専門バカだけでは、チームの中で会話すらできません。深い専門性と広い視野を兼ね備えた人が組織の中ではさらに活躍できるのです。

▼三浦善司流・相手を口説く3つのポイント

1. 口下手なら直球勝負で
2. 外国人にはロジカルに
3. 大事なことは最後にもう一度

リコー社長 三浦善司
1950年、青森県生まれ。76年上智大学大学院経済学研究科修士課程修了。同年リコー入社。93年リコーフランス社長。その後執行役員経理本部長、2013年より現職。
(山口雅之=構成 若杉憲司=撮影)
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