命名から20年足らずのあの「きのこ」

また私が子どもの頃に食卓に上がった記憶が無いものといえば、エリンギが挙げられます(野菜ではありませんが)。それもそのはずで、愛知県林業センターがエリンギの人工栽培に成功したのは1993年のことで、エリンギという名前が付けられたのは1998年なのだそうです。

まだ命名されてから20年も経っていないにもかかわらず、エリンギはスーパーですっかり定番の食材となっているのです。ちなみに、国内のきのこ生産量は多い順に、えのき、ぶなしめじ、まいたけ、エリンギ、なめこと続きます。

野菜の新旧について触れるならば、「伝統野菜」の話も欠かせません。聖護院かぶ、堀川ごぼうなどの京野菜、亀戸大根、のらぼう菜などの江戸野菜が有名ですが、伝統野菜は他にも全国各地に存在しています。

伝統野菜とは、代々その土地でつくられ、採種を繰り返していく中でその土地に根付いていったものですから、愛着をもって語られることが多いものです。もちろんそうした気持ちは尊重したいと思うものの、一方で必要以上に過大評価したり、あるいはスローフード運動と関連づけて現代農業を否定する文脈で語ったりするのは違うのではないかと感じることがあります。

例えば、三浦大根という神奈川県・三浦半島名産の大根があります。かつてはさかんに栽培されていましたが、1979年の台風で甚大な被害を受けてから一気に作付面積が減り、その後、青首大根という現在一般的に売られている大根にとって代わられました。