開発への強い思い入れがコスト増として跳ね返る

「大部屋が醸し出すメンバーの連帯意識が夢の進化を生んだ」
「大部屋が醸し出すメンバーの連帯意識が夢の進化を生んだ」

「進化といっても完成しているクルマを進化させるのですから、それこそど真ん中の力技が要求される。新しいモノをつくりたがる開発屋が、一番嫌がることです。しかも6年分進化していないと、開発者の存在価値は認められない。でも、進化させるという明確な目標が見えたほうが、戦いやすかった」

ここまで迷走に迷走を重ねたタイムスケジュールは、ギリギリだった。初代のあらゆる部分を進化させる方針を定めた以上、デザインやエンジンはもちろんのこと、部品すべての見直しが求められた。

たとえば燃費だ。

燃費を進化させるために、世界初の技術を導入してピストンをコーティングした。コーティングした成果は、東京から横浜まで走ってわずか10メートル走行距離が伸びるにすぎなかったが、開発者は燃費向上にこだわり続けた。

馬力も初代は86馬力だったが、いきなり95馬力に目標を定め、人見が「切りが悪いから100にしよう」と宣言して、100馬力を達成した。

このように初代の構成要素をどんどん進化させていくと、今度は開発コストが限りなく上昇する。購買本部四輪購買企画室の原義信購買主幹が、話す。

「新車の開発段階には、企画、企画の中間報告、企画完了というステップがあるのですが、二代目は中間報告だけで3回もやり直しました。開発者の強い思い入れと厳しいコスト計算の板ばさみで毎回予算オーバーになってしまい、報告のやり直しが命じられるのです。何千円単位のオーバーならどこかで吸収できる可能性もありますが、いつまで経っても何万円単位のズレがありましたので」

開発と同じく購買戦略でも、初代を進化させる事業構造の大転換が断行された。あえて日本で部品をつくらない方針を打ち出し、現地生産の要望を、開発がまだ図面の段階から積極的に取り込んで、部品調達の現地化を進めた。

「中国とアジア生産を拡大することで量産効果を図り、コストダウンを行い、世界中どこでも共通の1枚の図面で生産できる仕組みを整えて、グローバルな低コスト購買を実現した」