多くの賃貸物件は住宅性能が今ひとつ

一方、購入ではなく賃貸の場合も考えてみよう。賃貸の最大のメリットは住み替えのしやすさだ。家族の増減や収入の変化に応じて、住まいを自由に替えられる。ただし「一生賃貸」という場合は計画的に老後資金を貯蓄しておく必要がある。

そもそもファミリー向けの賃貸物件は絶対数が少ない。アットホームによると首都圏の賃貸マンション(2014年)では50平方メートル以下が78.5%で、70平方メートル以上の物件は3.8%しかない。住宅性能の違いにも注意が必要だ。一般的には永住型の分譲物件は性能が高く、住み替え型の賃貸物件は賃料回収が第一で、性能は法規定レベルという傾向が強い。

性能や広さも十分な「分譲マンション」を借りる手もあるが、賃料は高い。70平方メートルの平均賃料は首都圏平均で約18万円。同じ支払額で30年・金利1.5%の住宅ローンを組むと約5210万円を借りられる。30年後、購入なら物件が手元に残るが、賃貸はさらに家賃が必要だ。

資産価値だけで住宅を選ぶと必ず後悔する。大事なことは居住の満足度だ。ただし将来に備えて売却のしやすさも観点に加えてほしい。

住宅ジャーナリスト 山本久美子
早稲田大学卒業後、ベネッセコーポレーションを経てリクルートに入社。「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。2004年に独立。宅地建物取引主任者、マンション管理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)。
(星野貴彦(プレジデント編集部)=文)
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