人生と仕事の経験が豊富なシニア世代を専門に派遣する会社が高齢社だ。東京ガスに長らく勤めた上田研二最高顧問が、自らも60歳を超えて2000年に創業した。現在、60歳以上の登録社員が720人、最高齢が81歳。定年後のセカンドライフを仕事と趣味で楽しんでいる。

週3日勤務で平均月収は8~10万円

高齢者のための高齢社。一度聞いたら忘れられない社名だ。2000年に現在、最高顧問の上田研二によって創業された。上田も創業時は61歳で、定年後もやり甲斐を持って無理なく働ける環境をつくりたいと、シニア専門の人材派遣会社、高齢社を立ち上げた。

幸山明雄・高齢者社長(右)と緒形憲・取締役営業部長(左)。

その思いは、着実に花開き、現在、売り上げは5億円弱、登録社員は720人。平均年齢は69.4歳で、最高年齢は81歳。実際に仕事を請け負って働いている社員は登録者全体の40~50%で、70歳前後が平均値だ。

登録の条件は原則、定年者で60歳以上75歳未満だが、登録後は定年なし。本人に意欲と能力があれば何歳までも働ける。通常は週3日ほど働き、平均的に月8~10万円の収入になる。年金を受け取っている人なら、充分なお小遣いになる。

創業者の上田が長らく東京ガスに勤めていたことから、高齢社の現在の請負業務の7~8割はガスメーターの検針やガス機器の点検・修理、開栓、料金収納などのガス関連業務だ。社長の幸山明雄(67歳)はこう語る。

「東京ガスが電気を売り始めたことから、個人宅への営業やサービス店の業務などの仕事が急に増えました。営業で回るときは不在も多いし、大変な仕事ですが、みなさん粘り強くやってもらっています。数人でチームを組み、ローテーションで仕事をしています」

急に用事や体調不良などが起きても、誰かが替われるようにチームで仕事をしている。これも無理せず働くための工夫だ。

新築マンションの建設ラッシュが続いていたときは、ガス給湯器の点火試験や内覧会の立ち会い業務などで、土日は登録社員が引っ張りだこだったという。

資格や技能、趣味をうまく生かしている人もいる。例えば、液化天然ガスを扱うには高圧ガス取扱主任者の資格が必須だが、タンクローリーで毎日運び込まれるガスプラントの立ち会い業務を請け負い、4人交代で毎日通っているという。

家庭菜園を趣味としていたある男性は、ある企業から屋上庭園のメンテナンスを頼まれ、その仕事ぶりが気に入られてスポットのはずが定期的な仕事になったという。

まだ働きたいというシニアは真面目で粘り強いので、派遣先からも安心して仕事を任せられると評判だ。