ロボットが人間を超えるなんて、映画の世界の話、という時代もあったが、人工知能の研究が進むにつれ、いち早く商機を見出そうとする向きもある。グーグルXが開発を進めている自動運転車もその一つだろう。公道での試運転も始まっているが、商品化はいつ頃と見ているか。

「私は、自ら創設したグーグルの秘密研究プロジェクト『グーグルX』で自動運転車の研究・開発などに長年かかわってきました。かつては『インテリジェント・カー(高い知能を有する車)を造る』と言ったら、みんなに笑われたものです。

でも私は当初から『車は人より賢くなれる』という強い信念を持っていました。そして今、公道での走行実験も本格化し、それは実証されています。最近では私の妻は、私が自動運転車を手動で運転しようとすると、『自動運転のほうが安全だから、そちらに切り替えてほしい』と言うほどです(笑)。自動車に限らず、飛行機の自動操縦はもう始まっていますよね。

ここで重要なポイントが一つあります。人間なら、運転ミスをしたときに同じミスを起こさないよう学べるのは本人だけ。一人の学びを横展開できません。しかし、機械学習ができる自動運転車なら、ある車が経験したエラーや過ち、危機からの学びを速やかに別の車にも横展開できます。つまり、それぞれの車が学習したことを集団で共有できるので、人間では考えられないほど学習スピードが加速します。しかも、人工知能は人間と違い、一度学んだことを忘れません」

無人運転車は安全なのか?

機械学習とは、ふだん人間が当然のように行っているルールやパターンなどを“学習する”能力を、人工知能でも実現するもの。さらに、人工知能の学習が加速し、人間が操作しなくても人間のように自ら学習して自動的に学び、能力を向上させることを「ディープラーニング(深層学習)」と呼ぶ。

「今、グーグルXでは、ディープラーニングをテーマに演習を繰り返す『グーグル・ブレイン』というプロジェクトが進行中です。

人工知能の肝となるのはデータです。ビッグデータ時代の到来により、大量のデータをコンピュータ処理できるようになった今、ディープラーニングの研究も加速度的に進んでいます。