離脱派だけでなく残留派の「脅し」や公約違反も公平に問題にすべきだ

最近、日本のメディアは、離脱派が国民投票前に唱えていた主張が嘘だったと報道している。イギリスの選挙ではもちろん、日本の選挙でもそんなことはよくあること。キャメロン首相は移民の数を10万人以下に抑えると公約して総選挙を戦った。ところが現実は移民の数は30万人。現在、イギリスに移民を制限する手立てはない。にもかかわらず移民を抑制すると言い放ったのは大嘘つきで、とんでもない公約違反だ。離脱派の公約違反を指摘するなら、残留派の公約違反も指摘しなければならない。残留派はイギリス政府がはじいた経済予測を持ち出し、EUから離脱すればこれだけイギリスにマイナスになる!! と主張した。日本の自称インテリも同じことを言っている。

しかし官僚や政府の予測が外れるなんて日常茶飯事。そう言えば、つい最近では、消費税を8%に上げても日本の経済には何の影響もないと言い続けていた財務省の予測が、まったく外れたことは記憶に新しい。

イギリスでも同じ。イギリスはEUに加盟する際、統一通貨のユーロに入らず独自通貨のポンドを維持する、そして人の移動の自由を保障するシェンゲン協定にも入らないという決断をした。この際、現在残留を主張している人たちは、ユーロに入らなければ、シェンゲン協定に入らなければイギリスは孤立する、経済は衰退する!! と脅しに脅しをかけた。では現実はどうか? EUの中でイギリスはドイツと共に経済は好調だ。今回、残留派の主張にも多くの嘘があるだろう。ここは公平に検証すべきだ。

ここで少し、EUとシェンゲン協定について解説します。

この2つを混同している人が多い。イギリスはEUに加盟しているがシェンゲン協定には加入していない。EUに加盟すると、加盟国間の人の移動や居住は自由になる。EU国民は、EU域内の移動は自由であり、どこにでも居住できる。つまり不法滞在という概念がなくなる。

シェンゲン協定は、パスポートチェックをしないということ。こちらは手続きの話。そうするとイギリスは、EU国民がイギリスに入ってくることは保障するけど、パスポートチェックだけはしますよ、というもの。したがってEU国民に対してはパスポートチェックは形式的なものになる。非EU国民に対してのみパスポートチェックの意義が存続する。

ちなみにシェンゲン協定加入国はEU国民はシェンゲン協定圏内をパスポートチェックなく自由に移動でき、居住できる。さらに非EU国民がシェンゲン協定圏内に一度入国すると、非EU国民もシェンゲン協定圏内をパスポートチェックなく移動できる。

元へ。イギリスはEU国民を原則無制限に受け入れなければならない。ただし一応のパスポートチェックはするが、それはEU国民の入国管理、すなわち受入数管理を伴うものではない。パスポートチェックは形式的なもので、パスポートコントロールはないに等しい。