売りたい顧客のモデルを詳細につくり込む理由は2つある。1つは、ペルソナを明確にすることでマーケティング施策も明確になるからだ。同じ既婚女性でも、ライフスタイルや属性によってリーチしやすい広告媒体は異なる。専業主婦なら、テレビCMはお昼のワイドショーで打つといいし、共働きなら夜のドラマのほうがいい。このようにペルソナが明確なら、それに合わせて投資対効果の高い広告宣伝ができるようになる。

組織で顧客像について意思統一ができることも理由の一つだ。たとえば「30代女性」というセグメントだけだと、それぞれが違う人物像をイメージするかもしれないが、ペルソナが明確ならみんなで共有しやすく、組織でブレのない活動が可能になる。

ターゲットを1人に絞り込むと他の顧客を切り捨てることになり、ヒットしないのではないかと心配する声もあるだろう。しかし、具体的に想定した1人にさえも刺さらないような広告表現や説明では、誰の心もとらえることはできない。逆に1人の心を動かすことができれば、その人に共感する層にも自然に広がっていく。

ペルソナ分析はもちろん万能ではないが、次の一手を打つときの精度を上げていく手法としてとても有効だ。

マーケティングアイズ社長 理央 周
アマゾンジャパン、マスターカードなどでマーケティング・マネジャーを務めた後、2010年より現職。マーケティングに特化したコンサルティングなどに携わる。著書に『「なぜか売れる」の公式』ほか。
(村上 敬=構成 榊 智朗=撮影)
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