血液型性格診断や『水からの伝言』といった「科学らしさを装った迷信」を、私は「ニセ科学」と呼んでいる。科学的な背景の強弱にかかわらず、ニセ科学を信じ込んでいる人を説得するのは難しい。なぜなら「結論ありき」だからだ。

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彼らはどんなに事実を積み重ねても、考えを変えようとはしない。「ないことの証明はしない」というのが科学のルール。存在しない論理は反証のしようがない。「アポロは月に行かなかった」「9.11は米国の自作自演だった」といった陰謀論も同様の構造にある。

私はSFが趣味で、怪しい話はもともと好きだった。だがオウム真理教の事件を経て、ニセ科学を笑えないようになった。オウムの“科学技術庁長官”だった村井秀夫は大阪大学大学院の修士課程を修了している。科学を捨てて宗教をやるならまだわかるが、オウムのなかでニセ科学を行うことに、私は衝撃を受けた。ニセ科学や陰謀論はカルトとの親和性が高い。血液型性格診断がカルトにつながるとはまったく考えていないが、まったく違う話でもないのだ。

性別や出生地をめぐる差別は厳しく取り締まられるようになり改善された。血液型にもそのような取り組みが期待される。いまだに履歴書へ血液型を書かせるような企業もある。「就職差別」の被害を司法の場で争うようなケースが出れば劇的に改善するかもしれない。だが現状では、いくらニセ科学だと訴えても焼け石に水だろう。

私も宴席で血液型を聞かれることがある。多くの場合は「大型」や「小型」、「Z型」などと答えてはぐらかしている。天気と血液型は差し支えのない話題と考えているのかもしれないが、とんでもない。むしろ「それしか話題がないのか」と見下される恐れがあることを、肝に銘じてほしい。

(プレジデント編集部=構成 浮田輝雄=撮影)