ただ、その際に気をつけるポイントがあるというのは、ストラテジックパートナーズジャパン代表取締役の兼本尚昌氏だ。

「たとえば子会社社長など、一国一城の主になったとします。組織的にも物理的にも本社から離れることになり、ある程度のフリーハンドを得て改革に着手する。そこまではいいのですが、上司への報告・連絡・相談(報連相)がおろそかになってしまうことがままあります。これが危険なのです」

どういうことか。

「組織人には誰でも上司がいます。社長にしても、オーナーやファンドなどの株主が上司に当たります。社長を長期間つとめている人は、株主へのていねいな報連相を心がけています。逆に報連相をおろそかにすると、結果を出す前に解任されるおそれがあります」

危険なのは「一発逆転を狙って、一人で密かに冒険的な事業のネタを仕込んでおく」という企みだ。「左遷された」という意識を持つ人が、ついやってしまいがちな行動だと兼本氏はいう。華やかな成功を手土産に、本流へ返り咲こうというのである。

こういう場合、失敗時に責任を問われるのはもちろんだが、成功しても逆効果になりかねない。

「彼は隠密行動をとる人間だという評判が立ち、信頼を失います。また、妬みを買って、その後の支援が得られないということも現実に起きています」

奇手妙手に頼るよりも、「猛烈に働いて業績を上げる。このことに尽きるのではないかと思います」(兼本氏)。

経営者JP社長 井上和幸
1989年、早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人事部門、広報室、新規事業立ち上げを経て、2000年に人材コンサルティング会社取締役就任。現在のリクルートエグゼクティブエージェントを経て、10年から現職。著書に『社長になる人の条件』など。
 
プロノバ社長 岡島悦子
筑波大学国際関係学類卒業。三菱商事、米ハーバード大学経営大学院(MBA)、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002年、グロービス・マネジメント・バンクの設立に参画。05年代表取締役。07年から現職。アステラス製薬などの社外取締役もつとめる。
 
ストラテジックパートナーズジャパン代表取締役 兼本尚昌
山口県出身。防衛大学校人文社会科学科国際関係論専攻を卒業後、ダンアンドブラッドストリートジャパン、ガートナージャパンなどを経て、ストラテジックパートナーズジャパンを設立。著書に『プロ・ヘッドハンターが教える 仕事ができる人のひとつ上の働き方』など。
(宇佐美雅浩=撮影)
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