2015年12月からストレスチェック制度が施行されるなど、近年、多くの職場でメンタルヘルス活動の環境が整備されてきた。しかしメンタルトレーナーの著者によれば、大人よりも子どものほうが悩んでいるという。

加藤史子(かとう・ふみこ)
筑波大学卒。千葉大学大学院教育学学校教育臨床課程修了。子どもたちのメンタルトレーナー、企業研修講師。子どもや自分の心のケアをできる人を増やすためのしあわせカウンセラー講座を東京、大阪、安曇野で開催している。著書に『ストレスをすっきり消し去る71の技術』など多数。

「子どもが悩みだす年齢は10歳ぐらいから。カウンセリングという選択肢もある大人に対して、世界が狭い子どもは両親が悩みを否定すると八方ふさがりになってしまいます。また悩みを言語化できない心の重さもある」

そこで著者は子どもに向けた講演の中で「こころめがねをかけよう」と提唱してきた。こころめがねとは、「それまで見えていた世界をまったくちがう世界に変えるウルトラハッピーめがね」。心理学における、新しい枠組みで物事をとらえて意味づけを変えるリフレーミングという手法だ。気の弱さを思い煩う子には、「人の気持ちを理解して優しくできる人」。落ち着きがないと叱られる子には「エネルギーがいっぱいある」と別の解釈を提示し、自ら気持ちを切り替えるトレーニングをしていく。

「ネガティブさを好転してとらえるようになった子どもは、『これで悩まなくていいんだ!』と感動してくれますね。大人にも同様のセミナーを開催していて、金融危機は『事業がピンチ』というフレームから、『経済を立て直すチャンス』へ。『仕事が向いてない』という悩みは、組織の一員ではなく個として自分に何ができるかを問い直す好機だと。つまり、あらゆる事象の中に『喜び』を見つけるゲームなんです」

自分の心中だけではなく、こころめがねで他人を覗き込んでもいい。著者が担当する卓球の平野早矢香選手は真面目な性格ゆえ、試合で負けると自分の不甲斐ない部分ばかり気にして、結果を出せなくなった。そこで「失敗は落ち込む理由ではなく、課題。次に同じ場面がきたらどう直す?」と問いかけ続けた結果、平野選手は「未来は変えられる」という見地を獲得。飛躍的にメンタルが強くなり、五輪でメダリストにもなった。

「ぜひ親は子どもをこころめがねで見てあげてください。自分と同等の能力を求めて、できないところに目がいきがちですが、長所を見出された子どもは自信を持って生きられます。光と闇は表裏一体。闇の中に光を見つける作業を心がけましょう」