財政赤字を抱えたギリシャを震源地として通貨「ユーロ」が大揺れだ。ギリシャの財政赤字は対GDP(国内総生産)比12.7%、対して国債発行残高が680兆円を超え借金大国に陥った日本のそれは2009年度に11%程度と見込まれているので、ギリシャはさらに悪い状態である。

まず、会計的な視点から、問題点を4つ指摘しておきたい。

会計士から見たギリシャ問題の構図
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会計士から見たギリシャ問題の構図

一つ目は、ギリシャがこれらの財政赤字に関するデータを開示したのは昨年10月で、先に対GDP比の財政赤字4%程度としていた発表を大幅修正したこと。深刻な財政赤字を隠していたわけで、「国が粉飾決算していた」のと同じだ。

企業と違って国家には監査がないものの、「まさか国家が……」というのが投資家の本音であろう。こうなると「本当に大丈夫なのか」「実はもっと酷いのでは」と疑いの目は強まる。実際に投資家はリスクを懸念して、昨年末からギリシャ国債を手放し始めた。その結果、ギリシャ国債の価格は値下がりしている。これが第二の問題だ。

国債の利率の多くは発行時に決まった固定金利なので、国債の価格が下がれば、利回りは上昇する。すると新たに発行する国債には、それを上回る利率をつけなければ買い手がつかない。そうなると資金調達ができず、すでに発行した分の利払いもできなくなる。これがデフォルト(債務不履行)リスクだ。

この3月末に発行されたギリシャ国債の利率は5.9%。4月に入ってから、さらに金利は上昇して7%を超える水準に達した。利払いは膨らみ、そのつけはギリシャ国民に回ってくる。

第三の問題は、ギリシャが単独で金融政策を行えない点だ。景気の悪化時には資金の供給量を増やす金融緩和が実施されることが多い。しかしギリシャをはじめユーロを導入している各国は、欧州中央銀行が決めた金融政策に従う必要があり、自由にはならない。付加価値税(消費税に相当)引き上げや公務員の報酬削減などで、独自にできる財政再建策をとるしかないのだ。

ところで、これほどギリシャの問題が取り沙汰されているのは、日本国債の場合は大半を国内の投資家が保有しているのに対し、ギリシャ国債の7~8割をEU(欧州連合)諸国の外国人投資家が保有していることも影響している。ギリシャの対外債務残高2.8兆ドルの内訳を見ると、フランス26%、スイス21%、ドイツ13%となっており、EU諸国が大半を占めている。デフォルトになれば、各国の経済に大打撃を与える。

今回の問題を受け、投資家はポルトガル、イタリア、スペインなどの財政赤字が深刻なユーロ導入国に対しても疑心暗鬼になっている。それで、ギリシャを含めた4カ国の頭文字をとった「PIGS」が問題児扱いされているわけだが、ことはこれだけに収まらず、ユーロ自体に不信感が集まっている。これが第四の問題である。

「ユーロを導入している16カ国からなる“株式会社ユーロ圏”の通信簿ともいうべき連結決算を評価した結果が、ユーロの為替相場そのものだ」。会計士の目からユーロを見るとこうなる。粉飾まがいの決算数字を出しているグループ会社があれば、とても投資しようとは思わない。だからユーロは対円で昨年8月の1ユーロ=140円60銭から今年3月の119円18銭まで15.2%も急落したのだ。これでは、まっとうに経営していたドイツやフランスはたまらず、ギリシャに対して不満を抱くのも無理はないだろう。

先ごろユーロ圏16カ国がギリシャに対するIMFとの協調融資という支援策を決めた。しかし支援に消極的な国もあり、先行きは不透明だ。もちろん日本も対岸の火事ではなく、財政の立て直しは待ったなしの状態である。