人事部には不倫・密会のたれ込み多数

会社にとっては不倫を処分する「伝家の宝刀」といえそうだが、実際に宝刀が抜かれることはめったにないと語るのは食品業の人事担当者だ。

「どこの職場の誰と誰が付き合っているというウワサや社員のたれ込みが人事部に結構入ってくるが、それだけで処分することはほとんどない。証拠を集めたり、不倫の事実を確認したりするのも大変な作業だ。仮に、事実が確認できたとしても情報としてストックするだけでよほどのことがない限り処分することはしない。業務に支障がなければ見逃しているし、とくにキャバクラの女性と付き合っているといった類の話も無視している。もうひとつは解雇や降格などの懲戒処分をして、本人が裁判に訴えたら面倒になるという理由もある」

不倫の事実だけで処分することはないと言うが、実際に使用者と労働者が交わす労働契約は私生活に対する使用者の支配まで正当化するものではないという解釈が一般的だ。

就業規則に処分の規定を設けても裁判例でも社内不倫自体は特段の事情がない限り、解雇などの処分は無効になるケースが多い。

住宅販売会社の人事担当者も単なる不倫に関しては何も処分しないと言うが、こんなケースもあると言う。

「世の中の流れで新卒女性の採用を増やしているが、営業職の場合は住宅購入を決める家庭のご主人が帰宅する午後8時過ぎや土日に営業することもある。平日の夜は商談が終わるのは午後10時を過ぎることもある。さすがに若い女性を人気のない郊外に行かせるのは危険だということで男性営業職を帯同させるようにしている。ところが、その男性社員と女性が付き合っているという情報が1件だけでなく何件も入ってきた。中には妻子持ちの男性もいたようだ。これはちょっとまずいということで上司を通じて口頭での注意を促したことがある」

仮に、不倫の事実が確認できても何もしないか、注意程度ですませる企業が多いとはいえ、不倫がこじれて男女間のトラブルが原因で業務に支障を来す場合や会社の社会的な信用を傷つけることになれば話は別だ。