日本を西洋化するからにせものになる

21世紀型の企業経営を考えたとき、日本型がいいか、西洋型がいいかという議論よりも日本の良さを磨いていくべきだと考えます。歴史を振り返ると、明治以降の富国強兵策のプロセスで、海外のすぐれた技術を、きちっと学んで、日本流に進化させてきました。日本独自のものは少なく、せいぜい、あるとしたら、武士道とか儒教のような精神的遺産といっていいのかもしれません。それ以外は西洋との組み合わせで、新しい理論を構築してきました。つまり“和魂洋才”です。そういう意味では、日本には良いものは取り入れるという多神教信仰のDNAがあるといっていいでしょう。

一方、欧米流の形式知のメリットは、ヒト・モノ・カネの経営資源をすべて数値化します。科学技術が非常に進歩していて、彼らはそこに絶対的な信頼を置いています。当然、それによって効率的なマネジメントも可能ですし、数々のイノベーションも達成してきました。しかし、マイクロソフトのビル・ゲイツやアップルのスティーブ・ジョブズに暗黙知がなかったかといえば、決してそんなことはありません。

相田みつをさんが「みんなほんもの」という詩を書いています。

<トマトがねぇトマトのままでいればほんものなんだよ トマトをメロンにみせようとするからにせものになるんだよ みんなそれぞれにほんものなのに骨を折ってにせものになりだがる>

私はトマトとメロンを日本と西洋に置き換えてみました。

<日本がねぇ日本のままでいればほんものなんだよ 日本を西洋にみせようとするからにせものなんだよ>

日本企業はメロンになるのではなく、トマトのままで成長すべきだということです。あなたはどう思いますか。

武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン社長
1968年生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て約18年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かすよう心掛けている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、 驚異的なペースで 飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務。08年1月代表取締役社長、半蔵門パートナーズ代表取締役を兼任。
(取材・構成=岡村繁雄)
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