賃貸経営に関心を持つ層が広がる中、他と差別化を図り、成功を収めるポイントはどこにあるのか。自らも賃貸経営を実践し、資産運用セミナーの講師なども数多く務める住宅コンサルタントの野中清志氏に聞いた。
野中清志(のなか・きよし)
株式会社オフィス野中
代表取締役
住宅コンサルタント。マンションデベロッパー勤務を経て、2003年にオフィス野中を設立。不動産に関する講演・執筆を多く手がける。最新の不動産市場動向や経済動向をベースにしたアドバイスに定評がある。
 

分散投資における主軸となり得る不動産

堅実な資産運用を実現するには分散投資が基本だが、野中清志氏は、その中で主軸となる投資対象をきちんと定めるべき、とアドバイスする。

「野球でも、やはり不動の4番がいるチームは安定した成績を残せます。株や投資信託、リート、外貨預金など、さまざま商品がある中で、何を主軸としてポートフォリオを組むか──。この視点が資産運用に欠かせません。具体的には、長期的にインカムゲインを得ることができる不動産が一つの有望な選択肢です。不動産投資で安定した収益を確保しながら、株や外貨預金など、その時々でトレンドに合った商品を選び、比較的高いリターンを狙っていく。こうした形をつくれれば、安定した利回りを確保しながら全体のリターンを底上げすることが可能になります。その中では、不動産で得た利益を再投資していくといった発想も重要でしょう」

例えば5000万円の資金を投じてアパートを建てて、年間250万円の家賃が得られるとすれば、リターンは5%。その家賃収入をリートに投資して、さらに5%のリターンが得られれば、年260万円以上の収益になる。最初から高いリターンを狙うとリスクが大きくなるが、利益を再投資する方法であれば、リスクを抑えた資産運用が実現できるわけだ。

“借りられる”という特権を活用せよ

各地で関連セミナーの講師を務める野中氏によれば、土地オーナーも一般の人たちも、現在不動産投資への関心を強めている。

「何よりセミナーに初めて参加するという方が増えています。お話を聞くと、相続税の増税やNISAのスタートなどで資産運用への機運が高まったことに敏感に反応された方が多いようです」

背景の一つには年金不安もあるだろう。日本の財政を考えれば、今後、公的年金の状況がさらに厳しくなるのは確実。不足する老後の資金は自助努力で確保するしかない。

「私はリタイア後に3つの収入源を確保することをお勧めしています。1つ目は『公的年金』、2つ目は、健康維持のためにも、『働いて得る収入』。そして3つ目が『資産所得』です」

資産所得というのは、一定の時間が経過すると一定の収入が得られるもの。まさに不動産所得は代表的なものだ。そのメリットは、自分で使える時間が増えること。仮に毎月10万円を時給1000円の仕事で稼ごうと思えば、100時間働かなければならない。当然の話である。

「そして、不動産投資にはもう一つ大きなメリットがあります。それはローンを利用できること。特に今は超低金利です。これを生かさない手はないでしょう。ただし、ローンは誰もが、いつでも使えるというものではありません。もし今、“借りられる”という特権を持っているなら、使えるうちに使う──。そうした意識を持つことは大事です」

一般に、金融機関の側が考えるローンの完済年齢は79歳まで。最長返済期間は35年なので、それを最大限活用しようと考えれば、44歳までに融資を受ける必要がある。また、病気にかかるなどして団体信用生命保険に加入できなくなると、融資を受けるのは難しくなる。早く検討を始めれば、それだけ選択の余地は広がるということだ。