――三井住友海上 原 典之社長「海外M&Aで大型案件に挑戦」

高齢者向け商品開発の推進

──損保市場を取り巻く環境をどう見ているのか。
三井住友海上社長 原 典之氏

【原】当社の保険料は、ここ3年間、対前年比4%以上で伸びている。しばらく同じような伸びが期待できるが、いずれ自動車の保有台数は減っていく。今後は自動車保険のポートフォリオを埋めるような商品開発や、生産性の向上が必要になっていくだろう。

──どのような商品開発を想定しているのか。

【原】たとえば認知症高齢者の鉄道事故が起きて、賠償の問題が注目された。すでに成年後見人も被保険者にできるように特約を改定したが、今後も高齢化が進むことを考えると、さらなるアレンジが求められる。高齢化といえば、孤独死も社会問題化している。賃貸物件で孤独死が起きると、次の借り手がすぐに入りにくく、苦労する家主もいらっしゃる。家賃を補償する保険があってもいいのではないか。既存の枠組みにとらわれない商品開発をしていきたい。

──社会環境の変化で、他に注目しているトレンドは?

【原】ICT(情報通信技術)の活用は見逃せない。たとえばスマートハウスが普及すれば、ホームセキュリティの会社と組んで、水漏れをセンサーで感知したらすぐに駆けつけるといったサービスを火災保険とセットで提供できるかもしれない。

──生産性の向上は、どう実現するのか。

【原】現在、第一線で働く営業担当者の事務作業を、事務専門の部隊へ持っていく取り組みをしている。それによって、事務量は3割程度は減らせるだろう。また、保険金支払いの領域でも生産性向上に取り組みたい。当社はAD(あいおいニッセイ同和損保)と機能別再編を進めてきた。たとえば貨物や船舶はADから当社へ、モーターチャネルの一部は当社からADへ、リスク管理や内部監査についてはホールディングスへと再編した。ただ、保険金支払いの領域はこれからだ。ADと共同で損害サポートのシステムを開発したり、損害調査や後方事務などのオペレーションを共通化することで、保険金支払いの期間を短くしていきたい。これは生産性の向上と同時に、お客様に対する損害サポートの品質向上にも寄与するはずだ。